親族間や身内同士で金銭のやり取りをする場合、口約束だけで済ませてしまうことが多々あります。しかし、いざ相続が発生したときに「あのときの金銭は贈与だったのか、それともただの援助や貸付なのか」など、他の相続人とのトラブルに発展しやすいのが実情です。
そこで大切になってくるのが「贈与契約書」の作成です。贈与者(あげる側)と受贈者(もらう側)の契約内容を明確に書面化しておくことで、後々の紛争回避や税務申告の際の証拠にもなり、安心感が格段に高まります。
ここでは、贈与契約書の作成メリットや記載内容について説明していきます。
贈与契約書を作成するメリット
親しい間柄であっても、金銭のやり取りをするときは贈与契約書を作成しておいた方がいいでしょう。きちんとした契約書を作成しておくことで、次のようなメリットを得ることができます。
口約束ではなく本当に贈与があったことを証明できる
民法上、贈与は口頭合意(諾成)だけでも成立します。しかし、口約束だけでは贈与の事実を証明しにくいため、相続時や税務上で問題になりがちです。
また、履行前(財産を実際に渡す前)なら取り消せるという規定もあるため、書面がないと贈与の確実性が低いといえます。契約書があれば、税務署・第三者に対しても贈与の事実を明確に証明できます。
「名義預金」と疑われるリスクを防げる
特に親子間の贈与では、「親名義の通帳に子ども名義で預金していた」といったケースが多くあり、これが税務署から「名義預金」と判断されて相続財産に加算される可能性があります。
贈与契約書を作っておけば、生前に贈与の意思があり、贈与が成立していたことの有力な証拠になります。
贈与税の申告時に「税務署への説明資料」となる
一定額を超える贈与を受けた場合には贈与税の申告が必要です。その際、贈与契約書を添付または提示することで、税務署に対して贈与の事実を明確にできるメリットがあります。また、税務調査のリスク軽減にもつながります。
贈与契約書の基本的な書き方
贈与契約書を作成するうえで知っておきたいポイントや書式について覚えておきましょう。
贈与契約書作成時の記入事項とは
贈与契約書では、下記の情報を明確に盛り込むことが重要です。
| 項目 | 内容 | 補足 |
| ① 契約日 | 贈与の合意日を明記 | 和暦・西暦どちらでもOK |
| ② 贈与者と受贈者の氏名・住所 | 正確な記載が必要 | フルネーム・現住所 |
| ③ 贈与の目的物(財産の内容) | 現金・不動産・株式など具体的に | 金額・所在地・面積・通帳番号など詳細に |
| ④ 贈与の条件 | 無償で贈与する旨を明記 | 条件付き贈与の場合は特記事項を書く |
| ⑤ 両者の署名・押印 | 自筆署名+印鑑で合意の証明 | 認印でも可。重要な場合は実印+印鑑証明も検討 |
贈与契約書の書式と作成方法は
贈与契約書は、手書きでもパソコンでも作成に支障はありません。決まった書式はありませんが、パソコンで書面を作成し、日付や住所・氏名を自筆で書き加えると信頼性が向上します。
なお、押印する際はできるだけ実印を使うようにしましょう。認印でも契約自体は有効ですが、登録済みの印鑑を用いた方がトラブル回避や証拠力向上に役立ちそうです。
贈与対象者が未成年者や幼児の場合は
贈与の対象者が意思能力のない幼児の場合、親権者の署名捺印を契約書に加え、両者が代わりに承諾する形を整えます。いわゆる「子ども名義の貯金」なども、形式的には親権者が代理で承諾することになります。
ただし、意思能力がある程度ある未成年なら、権利を得るだけの行為に親権者の同意は不要(民法上、未成年者でも単独で可能)という判例・解釈もありますが、後日の誤解を避けるために親権者と一緒に署名捺印しておくのが無難です。
贈与契約書に印紙は必要か
印紙税法では、「課税文書(印紙が必要な文書)」に該当する場合にのみ、印紙税が課されるとされています。贈与契約書は、基本的に「課税文書」にあたらないため、通常は印紙を貼る必要はありません。
ただし、以下に該当するケースでは印紙の貼付が必要になることがありますので、十分注意しましょう。
【例】不動産の贈与が行われる場合の印紙税
不動産贈与を行う場合は、契約書面に200円の収入印紙を貼付する必要があります(「不動産の贈与に関する契約書」とみなされるため)。
【例】契約書に金額を記載した場合の印紙税
たとえば、贈与契約書に「贈与者〇〇は、受贈者〇〇より贈与代金〇〇万円を本日確かに受領した。」などと記載した場合、その金額に合わせた額の印紙を貼付することになります。
- 金額を記載しない場合は「一律200円の印紙を貼付」
- 金額を記載した場合は「額面に対する額の印紙を貼付」
贈与契約書のひな形
以下に、贈与契約書のひな形を示します(内容や項目は状況に応じて変化)。なお、ここに書かれた文例はあくまで参考例であり、法的に絶対の書式があるわけではありません。
【贈与契約書(例)】
| 贈与者(以下、「甲」という。)と 受贈者(以下、「乙」という。)は、下記の通り贈与契約を締結する。
第1条(目的物の表示)
または:
第2条(引き渡し・登記手続)
第3条(贈与の条件・負担がある場合)
第4条(実印・印紙税)
第5条(契約の解除・取消し)
第6条(合意管轄) 本契約に関して甲・乙間で紛争が生じたときは、甲・乙協議のうえ解決し、なお解決しがたいときは、○○地方裁判所を第一審の専属的管轄裁判所とする。
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まとめ
贈与契約を正式に行うとき、口頭だけで済ませるのは大変リスキーです。贈与に伴い贈与契約書を作成していれば、財産の種類・金額・移転方法が明確になり、税務署や相続人とのトラブルを回避しやすくなり、印鑑・日付・登記情報など公的要素を整えて信用度を高めることも可能です。
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