自分が亡くなった後、遺された家族が相続でトラブルを抱えるケースは少なくありません。実際、分割協議や税金の問題によって親族間の関係が悪化する事例も多数報告されています。

 

こうした不安を解消するためには、「相続を見据えた生前対策」が欠かせません。財産や負債の状況、家族構成をしっかりと整理したうえで、有効な手段を早めに講じておくことがとても大切です。

 

ここでは、相続財産の把握方法や遺言書作成、家族信託(民事信託)、任意後見制度、生前贈与、税務対策といった多角的な生前対策について説明していきます

 

相続財産と関係者を正確に把握する

相続対策を考えるうえでの第一歩は、自分の財産や負債を正確にリストアップすることです。不動産、預貯金、株式、投資信託、保険契約、さらには借金やローンなど、あらゆる資産と負債を洗い出しましょう。

 

  • 不動産の場所や評価額
  • 銀行口座の残高
  • 保険契約の内容
  • 借金やローンの残額 など

 

次に、相続人となる可能性がある家族や親族を特定します。配偶者や子、直系尊属(両親・祖父母)、兄弟姉妹など、誰が法律上の相続人になるのかをしっかり把握しましょう。家族構成を明確にすると同時に、各相続人の生活状況や考え方も把握しておくと、誰にどの財産を遺すべきか方針が立てやすくなります。

 

遺言書の作成で相続トラブルを回避

相続対策としてまず検討したいのが遺言書の作成です。自分の死後、財産をどのように分配するかあらかじめ書面で示しておくことで、家族間に起こりうる争いのリスクを大幅に減らすことができます。遺言書には以下の種類があります。

  1. 自筆証書遺言
    • 本人が手書きで作成し、署名・押印する形式。手軽だが法的不備が起こりやすい。
  2. 公正証書遺言
    • 公証役場で公証人が作成を支援。形式や要件が厳格に守られるため、信頼性が高い。
  3. 秘密証書遺言
    • 内容を封印し、公証人に提出して作成する。秘密性が高いが、手続きがやや複雑。

 

遺言書作成のポイント

  • 遺言内容を明確に:財産を誰にどれだけ渡すのか、細かい点までハッキリ記載する。
  • 法的要件を満たす:署名・押印・日付の記載など、遺言無効にならないよう注意する。
  • 定期的に見直す:家族構成や財産状況に変化があった場合、新たに遺言書を作成しなおすか追記(附言)を検討。

 

家族信託(民事信託)の活用

年齢を重ねていくうちに自分自身の判断能力が低下していくかもしれません。そのような状況を迎える前の対策として有効なのが、家族や信頼できる人に財産の管理・運用を任せる「家族信託(民事信託)です。家族信託では、関係者を次のように分類しそれぞれが役割を果たします。

 

  • 委託者:財産を持つ本人
  • 受託者:財産を管理・運用する人(たとえば子や親族)
  • 受益者:財産から利益を得る人(通常は委託者自身)

 

信託契約を結ぶことで、相続発生後、受託者によるスムーズな財産管理・処分が可能になります。委託者自身の認知症対策や事業承継対策として効果的です。

 

家族信託のメリットと適用例

  • メリット
    • 財産管理をプロセス化できる:誰がどのように管理するのかを明確化
    • 遺産分割協議を回避:信託契約で財産の帰属先をあらかじめ定めるため相続後のトラブルが減少
  • 適用例
    • 不動産オーナーが認知症になった際の管理・運用
    • 親が事業用の土地や建物を子に信託し、引き続き収益を受け取る
    • 高齢者の財産保全や、障害のある子供への財産残し

 

任意後見制度で判断能力低下に備える

高齢になって自らの判断能力が衰える前に、自分があらかじめ選んだ人(任意後見人)に財産管理や生活支援を委任する制度が「任意後見制度です。任意後見契約公正証書を作成し、本人が万が一判断力を失った際に後見人が正式に活動を開始します。

 

任意後見制度のメリット

  • 信頼できる人を後見人に指定できるため、トラブルを回避しやすい。
  • 家族信託と組み合わせることで、財産管理をより柔軟に行うことができる。
  • 法定後見制度のように家庭裁判所が一方的に後見人を指定する形ではないため、本人の意向が尊重されやすい。

 

生前贈与で相続トラブルを回避

まだ元気なうちに特定の人物へ財産を渡しておくなどして、自分が望む財産分割の在り方を自らの手で実現できるのが生前贈与です。

 

非課税枠を活用することにより、相続税の節税にもつながる場合があります。具体的には次のような減税例を挙げることができます。

  • 年間110万円までの贈与税の基礎控除を活用して贈与すれば、贈与税がかからない。
  • まとまった金額を子供や孫に渡したい場合でも、早めに複数回に分けることで税負担を減らす。

 

生前贈与の注意点

  • 相続開始前3年以内の贈与は持ち戻し(相続財産に加算)される場合がある。
  • 大きな贈与を一度に行うと贈与税が高額になる可能性があるため計画的に進める必要がある。

 

保険や不動産を活用して相続税の負担を軽減

生命保険や不動産を活用して、相続税額を低減させることもできます。

 

生命保険を活用した場合

生命保険金は「残された家族の暮らしを保障する」という意味があることから、死亡保険金額のうち「500万円×法定相続人の数」に相当する額が非課税とされています。非課税枠の有効活用を踏まえ、適切な人物を保険金受取人に指定しておくことで、相続税の負担を一定程度抑えることができるでしょう。

 

不動産を活用した場合

賃貸物件や共同住宅として不動産を運用すれば、相続税評価額を下げつつ、家賃収入などのメリットを得ることができます。

  • 更地のままより賃貸建物を建てるほうが評価額が低くなる傾向
  • ただし、借入金や空室リスクなどの収益シミュレーションが必要

 

まとめ

相続対策を始めるタイミングは「早いほど良い」と言われています。年齢を重ねると判断能力が衰えるリスクが高まり、準備が遅れるとトラブル回避が難しくなるからです。

 

相続の生前対策とは、単に「財産をどう分けるか」だけでなく、家族全体の安心や納得感を確保するための非常に重要なステップだといえます。

  • 「財産と負債の正確な把握」
  • 「遺言書や家族信託、任意後見制度の活用」
  • 「生前贈与や保険、不動産活用による節税対策」

といった方法を的確に組み合わせることで、相続時のトラブルや税金負担を軽減し、家族が円満に財産を受け継げる体制を築くことができるでしょう。

 

当行政書士法人では初回の無料相談を実施中ですので、次のような不安やお困りごとを抱えている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

  • 相続で何から手をつければいいかわからない
  • 家族間の意見が対立しそうで不安
  • 節税や財産管理の対策を知りたい など

ご相談者様の状況を丁寧にヒアリングし、あなたに合った相続プランをご提案いたします。

 

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