贈与契約によって財産を承継する場合、生前贈与か死因贈与のいずれかを選択することが多いといえます。では、贈与された財産に対してはどのような税金が課税されるのでしょうか。
ここでは、贈与で承継した財産に課せられる税金について説明していきます。
贈与契約とは何か
贈与契約は、贈与者(あげる側)と受贈者(もらう側)の合意によって無償で財産を移転する契約です。重要なのは、贈与者の「譲りたい」という意思表示に加えて、受贈者の「受け取りたい」という承諾がそろって初めて成立する点です。どちらか一方の意思だけでは贈与契約は完成しません。
贈与は口約束だけでも成立するか
贈与契約は書面化しなくても成立可能ですが、口約束の場合は実際に財産を渡すまで(履行前)は取り消せる余地があります。いったん贈与が執行されると取り消しは難しく、口約束の場合は書面化していないためトラブルが起きやすいと考えられています。
- 書面(契約書)での贈与契約:取り消しができない場合が多く法的安定性が高い
- 口約束の贈与契約:成立はするが履行前なら原則取り消しが可能
死因贈与と遺贈の違い
死因贈与とは、贈与者の死亡をきっかけにして財産が無償譲渡される契約をいいます。贈与者が生前に「私が死んだらこの家をあなたにあげる」と申し込み、受贈者が承諾して成立します。
遺言による贈与(遺贈)との違い
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- 遺贈は遺言者の一方的な意思表示(単独行為)
- 死因贈与は生前に“受贈者の承諾”が必要な契約行為
課税関係
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- 死因贈与は「相続税」の対象となる(死亡による財産移転だから)
贈与された財産に贈与税・所得税は課税されるか
贈与に係る課税関係は、贈与が個人から行われたか法人から行われたかによって変わってきます。
【贈与税】「個人→個人」への贈与
個人から個人へ財産を無償で渡す場合は、贈与税が原則として課されます。たとえば親が子へ1,000万円の贈与を行った場合、子には贈与税がかかる可能性があります(非課税枠や特例がない場合)。
- 主な非課税・特例
- 年間110万円までの基礎控除(暦年贈与)
- 相続時精算課税制度(2,500万円まで一時非課税、その後相続時に合算)
- 教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与特例など
【所属税】「法人→個人」への贈与
贈与者が会社や法人の場合は、贈与税ではなく所得税として課税されるのが通常です。具体的には、受贈者が従業員や役員なら給与所得扱い、それ以外なら一時所得扱いとなることが多いです。
【相続税】死因贈与や遺贈の場合
死因贈与や遺贈(遺言による贈与)は、相続税がかかる点に注意しましょう。遺言書を書いて財産を渡す「遺贈」と、死因贈与契約で渡す「死因贈与」は、いずれも「死亡をきっかけ」に財産が移るため相続税法の適用を受けます。
贈与契約を行ううえでの注意点
生前贈与や死因贈与など贈与契約を結ぶ際は、次の点に注意しましょう。
贈与者と受贈者の意思確認
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- 贈与契約は必ず「贈与者の意思表示」+「受贈者の承諾」が必須
- 口約束だけでは内容が曖昧になりやすいため、書面化・公正証書化を検討
贈与契約の取消しに関する取り決め
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- 書面のない贈与契約は、履行前なら取り消せる(民法)
- 一方、書面での贈与は基本的に取り消しできず、例外は「受贈者の背信的行為」など極めて限定的
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税負担や費用の確認
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- 贈与税の算定や納付義務は受贈者にあるが、実務では贈与者が贈与税分も負担するケースもあり得る
- 不動産贈与なら登録免許税や不動産取得税、譲渡所得税などを要確認
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死因贈与と遺贈の混同に注意
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- 死因贈与は贈与契約、遺贈は遺言書による単独行為
- 税法上はどちらも相続税がかかるが、契約形式・手続きが異なる
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【事例】贈与契約の注意点
【事例】田中さん(父)は、長男に自宅を生前贈与したいと考え、口約束のみで「家をあげる」と言った。後日、田中さんが「やっぱりやめたい」と言い出しトラブルに。
問題点
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- 口約束でも贈与契約は一応成立するが、書面化していないので履行前なら田中さんは取り消す権利を持つ
- 長男は家をもらえると思ってすでにリフォームの準備を進めていた
- 書面がないため具体的内容(どの不動産をいつ移転するか)が曖昧
解決策
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- 書面で贈与契約を作成し、贈与税や登記費用の負担を明確にする
- 口約束段階での取消しリスクを認識し、実行までの間の条件を整える
まとめ
贈与契約は、贈与者と受贈者の意思が一致すれば、口頭でも成立する一方、税務・登記・契約解除など多くの法的論点を含むため、しっかり理解しておくことが重要です。
もし「贈与契約を結びたいがトラブルや税務が心配」と感じるなら、専門家(行政書士・弁護士・税理士など)に相談して書面作成や税金の試算をお願いすると安心です。単なる思いつきで「これ、あげるよ」と口約束し、そのまま放置すると、後から多額の税金や家族間トラブルが発生しかねません。計画的に、正しい法知識を踏まえて贈与契約を活用することが、円満な財産譲渡の秘訣といえるでしょう。