民事信託(家族信託)の契約では、主に3つの当事者が関わります。それぞれ「委託者」「受託者」「受益者」と呼ばれ、この3者が信託の目的を達成するために協力します。

 

ここでは、委託者・受託者・受益者それぞれの役割について説明していきます

 

委託者とは?|信託財産を託す役割

委託者は、信託財産を他の者に管理・運用・処分を託す人物です。例えば、親が子に財産を託す場合、親が委託者になります。委託者になるには契約行為が可能な年齢と精神的な能力が求められますが、未成年や認知症の方は委託者になれません。

 

受託者とは?|信託財産を管理する役割

受託者は、委託者から信託財産の管理や運用を任される者です。個人でも法人でも受託者になれますが、未成年者はその責任を果たせないため受託者にはなれません。信託契約で受託者の権限や義務が明確に定められます。受託者は高い注意義務を負い、受益者の利益を最優先に考えなければなりません。

 

また受益者は、信託の実質的な「所有者」とも言えます。受益者は、受託者がその役割を正しく果たしているかどうかを監視する権限も持っています。受益者は委託者によって指定され、受益権は譲渡可能です。

 

受託者の義務

受託者は信託財産を管理するための権限を持ち、その権限を行使する際には以下の義務を負います

 

  • 善管注意義務 - 高度な注意を払って信託財産を管理しなければならない。
  • 忠実義務 - 受益者の利益を最優先に考え、信託契約に基づいて行動する。
  • 分別管理義務 - 自分の財産と信託財産を明確に区別して管理。
  • 自己執行義務 - 基本的に信託事務は自ら執行するが、委託者の同意で第三者に委託することも可能。
  • 公平義務 - 複数の受益者がいる場合、公平に信託事務を行う。
  • 帳簿作成義務 - 信託財産に関する帳簿を作成し、報告と保存を行う義務。

 

受託者が死亡した場合

信託契約期間中に受託者が死亡しても、契約はそのまま有効です。受託者の死亡に備えて、信託契約で代替受託者を指定しておくことが重要です。もし指定がない場合は、新たな受託者を選任する必要があります。

 

信託契約の受託者の人数、報酬、解任

受託者は複数人いても問題ありませんが、その報酬や解任を含めた扱いについて複雑化しやすい点に注意しましょう。

 

受託者は1人でも複数でもOK

信託法において、受託者の人数に制限はありません。複数の受託者を選任することも可能ですが、調整が難しくなるため、専門家を交えることが推奨されます。

 

受託者の報酬について

受託者は信託事務を行う対価として報酬を受け取ることができます。委託者と受託者が合意すれば、報酬を設定することが可能です。

 

受託者の解任と辞任について

受託者が辞任したい場合、委託者と受益者の同意が必要です。受託者を解任する場合、委託者と受益者の合意や裁判所の許可を得ることが求められます。

 

受益者とは?|役割と権利

受益者は、信託契約によって信託財産から得られる利益を受け取る人物です。受益者は、信託事務が適正に行われているか監視し、必要に応じて受託者を解任する権限も持っています。

 

受益者の種類

受益者は個人や法人、または法人格を持たない団体(町内会など)でもかまいません。さらに、胎児や将来生まれる人物を受益者として指定することも可能です。

 

まとめ

民事信託(家族信託)は、信託契約に基づいて財産を管理・運用するための仕組みです。委託者、受託者、受益者それぞれの役割を理解し、信託契約をしっかりと設計することで、円滑な財産管理と利益の保護を実現できます。

 

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