高齢になるにつれ、「もし自分が認知症になったら、誰が財産を管理してくれるのか」「病気や身体が不自由になってからの支払い手続きは大丈夫?」といった不安を抱える方が増えています。実は、こうした将来のリスクに備えるために活用できるのが「財産管理等委任契約」なのです。
ここでは、高齢の親の財産管理方法として注目される「財産管理等委任契約」の基本的な仕組みやメリット・デメリット、他の制度(任意後見契約など)との関係について説明していきます。
高齢の親の財産を守る4つの管理方法
高齢になってくると心身の不調が表れやすくなることから、自分の財産をどう管理し守っていくべきか不安に感じることも出てくるでしょう。そのような不安の解消に役立つ4つの財産管理方法について整理していきます。
1.成年後見制度の利用
成年後見制度は、認知症などにより判断能力が大幅に低下した人を保護するため、家庭裁判所が選任した後見人などが本人の財産管理や生活サポートを行う制度です。補助・保佐・後見の3類型があり、本人の判断能力程度に応じて異なるサポート内容を受けられます。
2.任意後見制度の利用
任意後見制度は、本人が元気で判断能力があるうちに「自分が将来認知症などになったときの後見人」を指定しておく仕組みです。公正証書で任意後見契約を結んでおけば、判断能力が低下した段階で家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、受任者(将来の後見人)が財産管理・生活支援を本格的に行います。
3.財産管理等委任契約の締結
財産管理等委任契約は、判断能力には問題がないが体調や身体的理由で自分での手続きが難しい場合に、第三者へ財産管理を委任する仕組みです。
これにより、預貯金の出し入れや各種支払いなどを代理人に任せることができ、また将来的に認知症などで判断能力が落ちたときは、任意後見契約に移行する流れ(移行型)を作ることもできます。
4.家族信託契約の締結
家族信託は、本人を「委託者」、信頼できる家族を「受託者」として、不動産や預金などの管理・運用・処分を任せる方法です。
委託者の判断能力が低下しても、受託者が財産処分を継続できる点が特徴的です。ただし、後に委託者が成年後見開始の審判を受けた場合、家族信託が終了してしまう場合もある点に注意しましょう。
財産管理等委任契約とは? その仕組みと特徴
財産管理等委任契約は、「認知症ではないが、自力での手続きが難しい」という状況に合った制度です。具体的には、下記のような場合に利用されます。
- 高齢者施設に入る前に預貯金の管理を家族や専門家に任せたい
- 身体が不自由で銀行まで行けないため、代理人に支払いや手続きを委任したい
- 将来、判断能力が低下する可能性を見越し、まずは財産管理等委任契約で支援を得たい
財産管理等委任契約のメリット・デメリット
財産管理等委任契約を利用すると、どのようなメリットを得ることができ、どのようなデメリットに注意することになるのでしょうか。
メリット
- 判断能力に問題がなくてもすぐ利用
- 成年後見制度は本人の判断能力が低下してからしか使えないが、財産管理等委任契約なら健康なうちに契約が可能
- 契約内容が柔軟
- 委任する範囲(預貯金の管理・支払代行など)や期間を自由に設定可能
- 日常的な事務負担を代理人にお任せ
- 公共料金や税金の支払い代行、入院費・施設利用料なども支援を受けられる
デメリット
- 受任者による財産濫用リスク
- 委任契約では監督機関がないため、代理人選びを誤ると財産使い込みの可能性
- 本人の意思能力が残っている限りは取消権がない
- 詐欺や不正契約があっても受任者が“取消権”を行使できず、法的保護が不十分
- 委任者が認知症になると契約終了の恐れ
- 一般的な委任契約は、委任者が判断能力を失うと効力が続かないため、別途「任意後見」などの仕組みが必要
財産管理等委任契約がふさわしいケース
財産管理等委任契約の利用を積極的に検討したいケースとして、以下を挙げることができます。
本人が施設入所・入院前に財産管理を確保したい場合
- 預金の出し入れや年金収入の管理をスムーズに行える
身体は不自由だが認知症ではない場合
- 外出や書類整理が困難な人が、家族や信頼できる人に手続きを任せる
将来は任意後見契約に移行したい場合
- 移行型で契約しておけば、判断能力低下後の後見手続きがスムーズ
当行政書士法人の財産管理等委任契約サポート
弊社では、財産管理契約と事務委任契約を組み合わせて、より幅広いサポートを提供しています。たとえば、以下の業務を代理で行うことが可能です。
- 財産管理・身上監護に関する一部または全部の事務
- 郵便物の受取・整理代行
- 公共料金・病院費・施設費の支払い代行
監督人の設置も検討を
財産管理等委任契約には、基本的に監督機関がありません。ただし、一人または複数の個人や法人を監督人と設定し、一定のチェック機能を持たせることは可能です。大切な財産を守るため、信頼できる受任者選びと監督体制づくりが重要といえます。
ほかの仕組みとの併用で万全に
財産管理等委任契約だけではなく、他の仕組みと併用することによって、より安心できる環境を作り上げることができます。
任意後見契約との併用
財産管理等委任契約でカバーできるのは「判断能力に問題がないうち」だけです。将来、認知症などで判断能力が低下すると契約が終了してしまう可能性があります。そこで、まず財産管理等委任契約を締結しておき、将来は任意後見契約に切り替える、という流れを作っておけば、長期的に安定したサポートを受けられます。
家族信託との比較
家族信託も本人が元気なうちに財産管理を移転する仕組みですが、成年後見の開始で職務が終了するなどの特性があります。財産管理等委任契約や任意後見契約を併せて検討し、自分に最も合った方法を選ぶことが重要です。
まとめ
高齢者にとって、自分の財産をどう管理するかは大切な課題です。財産管理等委任契約は、認知症ではないが日常の事務や支払いが難しくなってきた方にとって有効な選択肢となります。
また、将来的な任意後見契約や家族信託との組み合わせで、より万全の備えをすることも可能です。迷われている方は、専門家に相談しながら財産管理等委任契約を検討してみてください。
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