近年、身寄りがないまま一人暮らしを続ける高齢者や、子どもや親族と疎遠になった「おひとりさま高齢者」が増えています。自分が亡くなった後に葬儀や死後の諸手続きを誰が行うのか、あるいは財産がどうなってしまうのかといった不安を抱える方も多いでしょう。また、「親族には迷惑をかけたくない」「東京都でサービスを利用できるのか知りたい」といった声も聞かれます。
ここでは、身寄りのない高齢者が亡くなった場合にどのような流れで対応が進むのか、身寄りのない高齢者自身ができる生前対策はないか説明していきます。
身寄りのない高齢者が亡くなった場合の対応の流れ
一人暮らしの高齢者が自宅で亡くなり、周囲に家族や知人がいない場合、最初に遺体を発見した方が警察に届け出を行います。警察は事件性の有無を調べるために現場検証や検視を実施し、死亡に至った事情を確認します。
【東京都でのケース】
東京都内でも同様に、異変を感じた隣人や地域の見守りサービス担当者などが警察へ連絡し、身元の確認と死亡状況の調査が行われるのが一般的な流れです。
事件性がなければ自治体が遺体を引き取り
警察が事件性なしと判断した場合、自治体(市区町村)が遺体を一時的に預かります。身寄りのない高齢者の死亡時には、相続人や親族の有無を役所が一定期間調査し、それでも見つからなければ「無縁仏」として火葬・埋葬されるのが通例です。
【対応する法律】
- 「墓地、埋葬等に関する法律」第9条:死亡地の市区町村が火葬・埋葬を執行
- 「行旅病人及行旅死亡人取扱法」:外出先や病院などで亡くなったケースにも適用
遺体の発見場所による対応の違い
遺体発見場所がどこかによって、その後の対応が変わってきます。
自宅で死亡した場合
近隣住民の通報で発覚するケースが多く、警察が検視を行ったあと、自治体が引き取りを行います。
外出先で死亡した場合
発見後に警察が一時的に遺体を保管します。身元確認のうえ、引き取り手が見つからなければ自治体が火葬・埋葬の手続きに進みます。
病院で死亡した場合
病院から自治体に連絡が入り、家族・親族が不明の場合は自治体が引き取りを行います。
身寄りのない高齢者が亡くなる際の主な問題点
身寄りのない高齢者が亡くなった場合、周囲に気付かれにくい・手続きを行う者がいないことから、次のような問題点が生じやすいといえます。
孤独死が起こりやすい
長期間気づかれず、腐敗や異臭が発生してから発見される可能性がある。
死後の諸手続きに対応できる人がいない
本人は身寄りがないため、警察や自治体が最小限の対応(直葬・無縁仏として埋葬)を行う。
財産が国庫に帰属する場合がある
身寄りがなく、相続人が見つからなければ、残された財産は最終的に国庫に帰される場合がある。
【東京都の取り組み例】
東京都内の一部自治体では、高齢者の見守り事業や生活支援サービスを強化しています。しかし、死後の葬儀や財産管理にまで公的支援が細かく行き届くわけではないため、事前の自己対策が欠かせません。
【こんな記事も読まれています】
身寄りのない高齢者のための生前対策
周囲に頼れる人がいないからこそ、身寄りのない高齢者は自ら生前対策を行っておくことが大切です。そのようなときに役立つのが、死後事務委任契約なのです。
死後事務委任契約とは、生前に本人が信頼する第三者(個人や専門家)と契約を締結し、自分が亡くなったあとの下記のような手続きを代行してもらう制度です。死後事務は法律で厳密に定義されているわけではありませんが、一般的には以下のような内容を含みます。
- 死亡届の提出や関係機関への通報
- 葬儀・火葬・埋葬の手配
- 未支給年金や健康保険料などの精算
- 賃貸物件の解約・遺品整理
- 光熱費・通信回線などの解約
生前に死後事務委任契約を締結しておくべき理由
一人暮らしの高齢者が亡くなった場合、親族や知人がいないと上記の手続きが誰も行えないまま放置される恐れがあります。死後事務委任契約を交わしておけば、依頼先が公正証書などをもとに手続き可能となり、役所や金融機関が適切に対応してくれるメリットがあります。
死後事務委任契約の形態と受任者
死後事務委任契約は、委任者(本人)と受任者(第三者)の間で結ばれ、通常は公正証書として作成します。
受任者には特別な資格要件はありませんが、遺品整理や役所対応、法的手続きが伴うこともあるため、行政書士などの専門家に依頼するケースが増えています。東京都内でも、多くの行政書士・司法書士事務所やNPOが死後事務受任サービスを提供しています。
死後事務委任契約の具体的な流れ
死後事務委任契約の締結までには次のような流れを辿ります。
1.生前の相談・契約内容の検討
どのような葬儀を希望するか、納骨はどうするか、賃貸や光熱費の精算はどうするかなど、本人の意向を明確化します。
2.死後事務委任契約書の作成
公正証書で契約内容を取りまとめます。東京都の公証役場で手続きを行うことが一般的です。
3.預託金の用意
葬儀費や遺品整理代金など、死後の実費が必要になるため、受任者が使えるよう預託金を準備しておくのが通例です。
4.本人の死後、受任者が各種手続きを実行
病院・施設・警察などから死亡連絡が来ると、受任者は契約に基づき葬儀や火葬、各種解約などを円滑に進めます。
身寄りのない高齢者の死後の財産保護策
身寄りがないまま亡くなり、法定相続人がまったく存在しないケースでは、最終的に財産が国庫に帰属してしまいます。何も対策しないままでいた場合、本人の望む形で遺産を活用してもらうことができないため、次のような準備を進めておきましょう。
遺言書や信託契約の活用
万が一のときの備えとして多くの人が活用しているのが、遺言書や家族信託契約、死後事務委任契約です。それぞれの特徴についてみていきましょう。
遺言書
特定の団体や個人に遺贈することが可能。ただし、死後事務に関する細かい指示には法的効力が及ばない場合もある。
家族信託
自分の財産管理や死後の行き先まで柔軟に指定できる。遺産分割協議の手間を省き、確実に財産を希望の受益者へ渡せるメリットもある。
死後事務委任契約+遺言書
死後事務(葬儀・納骨など)の面は死後事務委任契約でカバーし、遺産分配や寄付先指定は遺言書で明記する方法が一般的。
【東京都での寄付先や活用事例】
東京都内には多くのNPO法人や福祉施設、文化団体などが寄付を受け付けています。たとえば「福祉事業に役立てたい」「動物愛護団体を支援したい」など、故人の遺志を生前に明確にしておくと、死後に財産が有効活用される可能性が高まります。
ドラゴンオフィスの「死後事務受任サービス」
当行政書士法人では、死後に発生するさまざまな事務手続きを包括的にカバーした「死後事務受任フルセットサービス」を提供しており、以下の業務を一括でサポートしています。
- 死後事務委任契約案の作成及び公証人との調整(死後事務委任契約の公正証書手続き)
- 委任者死亡後の各種契約先との事前面談や業者選定のサポート
- 死後事務委任契約の受任者お引受け、予備的受任者の調整
- 病院・施設・セキュリティ会社等の緊急連絡先指定引受け
- 死後事務のリストアップ化と継続的な死後事務の情報管理(年1回面談もしくはご連絡)
- 死後事務手続き10件までフルセットサービス内で受任(11件以上は別途お見積)
このようなフルサポートを受けることで、一人暮らしの高齢者でも死後の準備を安心して行えるのが特徴です。東京都在住の方にも多数ご利用いただいていますので、地域差なく対応可能です。
まとめ
一人暮らしの高齢者にとって、自分が亡くなった後の不安は大きな悩みです。しかし、事前の準備をしっかり行えば、葬儀や納骨だけでなく、財産の行方や社会への寄付などを含めて自分の意思を反映させることができます。ぜひ専門家との相談を通じて、自分に最適な死後の備えを整えてみてください。
当行政書士法人では、死後事務委任契約に関する無料相談を随時受け付けています。 一人暮らしの高齢者の方や、そのご家族・ご親族からのご相談にも対応しておりますので、「どのように契約を進めるのか」「東京都内で利用できるサービスはあるのか」といった疑問があれば、お気軽にお問い合わせください。