近年、日本では一人暮らしの高齢者が増加傾向にあり、身寄りのない高齢者の孤独死が社会問題として注目を集めています。死後に必要となる手続きは遺体の火葬だけではありません。賃貸住宅の退去や病院の精算、遺品整理など、多岐にわたる作業が発生します。こうした死後の事務手続きがどうなるのか不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで注目されているのが、「死後事務委任契約」です。生前のうちに第三者(受任者)と契約しておくことで、死後に発生する事務手続きをスムーズに行ってもらうことができます。
ここでは、新宿区が取り組む孤独死対策をはじめ、死後事務委任契約の必要性について説明していきます。
身寄りのない高齢者の増加と孤独死
日本は世界でも類を見ない速度で高齢化が進んでいます。政府の「令和元年版高齢社会白書」によると、平成30年(2018年)時点で65歳以上の人口割合は28.1%に達しました。その割合は令和2年(2020年)に22.4%、令和12年(2030年)には23.9%にも上る見通しです。
孤独死のリスクが高まる理由
孤独死を起こすリスクについて考えてみましょう。近親者との関係性や周囲の支援の活用有無が影響してきそうです。
近親者との関係性が希薄な場合
何らかの事情で周囲とのつながりが希薄になりがちな方は、孤立してしまうリスクが高まります。配偶者や子どもと死別・離別した方、未婚のまま高齢になった方、近隣住民との交流があまりない方などが当てはまりやすいでしょう。もしものときに助けを求める相手がいなければ、結果として孤独死を生みやすいといえそうです。
死後の諸手続きを任せる相手がいない場合
孤独死の大きな問題は、亡くなった後の手続きや遺体の管理・火葬といった事務面にもあります。法定相続人や親族が見当たらない場合、自治体が火葬を行ってくれるケースはあるものの、それ以外の事務作業までは対応してくれません。残された住居や遺品、公共料金の手続きなどが宙に浮いてしまうのです。
身寄りのない高齢者に対する新宿区の支援
東京都内でも単身者が多く暮らす新宿区では、高齢者の孤立を防ぐための取り組みが積極的に行われています。地域包括支援センターとの連携強化や見守り活動の充実を図り、以下のような施策を行っているのです。
定期訪問・見守りサービス
地域の福祉関係者や見守り登録事業者の協力を得て、独居高齢者に対して定期的な訪問や電話連絡を行う取り組みが進められています。
相談窓口の整備
生活困窮や介護、住まいなど多様な相談に応じる総合的な窓口があり、孤立する恐れのある方に手厚いサポートを届けようとする体制が整えられています。
また、行政や医療機関、地域包括支援センターや民生委員などが連携し、情報共有や対策検討を行う場を設けています。新宿区をはじめ、各自治体がこうした見守り体制を充実させることで、孤独死を未然に防ぐだけでなく、万が一の際に早期に対応できるよう取り組みを進めているのです。
しかし、遺体の火葬や家財の処分、入院費の精算など、あくまでも個々の死後事務については本人の手配が必要になる場合が多いため、生前のうちに「死後事務委任契約」を結んでおくことが重要になってくるでしょう。
身寄りのない高齢者の死後手続きの代表例
一人暮らしの高齢者が亡くなった後には、以下のように多くの手続きが発生します。
- 葬儀に関すること:通夜や告別式の有無、火葬、埋葬や納骨の方法などの決定・手配
- 費用精算に関すること:入院費用や老人ホーム・介護施設の利用料、家賃の支払い精算
- 物品の処分に関すること:遺品整理、部屋の退去、家財道具や生活用品の廃棄・処分
- 各種手続き:公共料金の停止・名義変更、行政への死亡届や年金・保険の手続き、銀行口座の凍結解除・解約など
こうした手続きは本来、親族や兄弟・子どもが手分けして行います。しかし、身寄りのない高齢者は代わりに行ってくれる人がいないため、死亡後にあらゆる作業が滞ってしまいやすいのです。
親族がいても、疎遠だったり地理的に離れていたりして助けを得にくいケースも考えられます。そのようなときの備えとして死後事務委任契約を締結しておけば、生前のうちに第三者へ各種の死後手続きを委任しておけるので、大きな安心材料となるでしょう。
死後事務委任契約で生前に死後の手続きを依頼
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に必要となる各種の事務手続きを、あらかじめ特定の第三者(受任者)に行ってもらうための契約です。契約内容を公正証書にしておくことで、確実に受任者が動きやすくなります。身寄りのない高齢者や、親族が遠方で頼れない方などが利用するケースが増えています。
死後事務委任契約のメリット
元気なうちから自分の死後に備えて「死後事務委任契約」を締結しておけば、次のようなメリットを得ることができるでしょう。
安心感の確保
自分の死後に発生する諸問題を解決してもらう先がはっきりするため、生前の不安が大きく軽減されます。
周囲への負担を軽減
友人や知人であっても、突然死亡後の手続きを依頼されると戸惑うもの。正式に契約を結んでおけばスムーズに対応してもらえるため、周囲への負担を減らせます。
トラブル回避
契約内容が明文化されていれば、遺品整理や費用精算をめぐるトラブルを回避しやすくなります。
受任者の選定と専門家の活用
死後事務委任契約の相手(受任者)は、友人や知人でも構いませんが、法的知識が求められる事務手続きが発生する場合もあるため、行政書士や弁護士、司法書士などの専門家へ依頼することも検討してみましょう。
専門家に相談すれば、死後事務だけではなく遺言など財産関連の相談もでき、一貫して手続きをサポートしてもらえるメリットがあります。
死後事務に欠かせない「預託金」
死亡後の葬儀費用や入院費・施設利用料の清算、家財処分費など、死後事務を遂行するには多額の費用がかかる可能性があります。そのような場合に備えて、死後事務委任契約を結ぶときは、受任者にあらかじめ必要分の金銭を預けておきましょう。これを「預託金」といいます。
預託金が必要な理由
死後事務委任契約を締結するためには、死後事務の遂行に必要な資金を受任者に預託しておかなければなりません。
預託金がないと支払いができない
亡くなった方の口座は凍結されるため、受任者が自由にお金を動かせない場合があります。生前に預託金を渡していなければ、葬儀費用や賃貸住宅の解約・退去費用を立て替えることが困難になり、手続きがスムーズに進みません。
使途を明確にできる
死後事務委任契約書のなかで「預託金を○○の用途に使用する」と定め、預かり証を発行しておけば、後々のトラブルを防止し、使途をはっきりさせることができます。
死後事務委任契約の具体的な条項例
預託金の必要性については先述のとおりですが、それを契約書にしっかりと落とし込むことが重要です。以下に条項例を示します。
| (預託金の授受)
第○条 甲は乙に対し、本件死後事務を遂行するための費用および乙への報酬として、本契約締結時に金○万円を預託する。 2 乙は、甲に対し、前項の預託金について預かり証を発行する。 |
このように書面化しておけば、まとまった金額を預けたことが明確になり、後々「預かったお金をどこに使ったのか」という疑義が生じにくくなります。死後事務委任契約を締結するときは、必ず専門家に相談しながら内容を精査すると安心です。
まとめ
一人暮らしの高齢者の増加にともない、死後の事務手続きを巡る不安を抱える方は少なくありません。新宿区など各自治体が孤独死対策を進めているとはいえ、死亡後の家財整理や病院の費用精算といった細かな手続きまでは行ってもらえないのが実状です。
だからこそ、「死後事務委任契約」に注目が集まっています。死後事務委任契約を結ぶことで、自身の死後の諸手続き・処分を第三者に依頼でき、身寄りがない方や親族と疎遠な方でも安心して余生を過ごすことが可能となるでしょう。
弊社では、死後事務委任契約に関するご相談を随時承っております。身寄りがない方も安心して暮らせるように、適切なサポート体制を一緒に考えていきましょう。
「何から手をつけていいかわからない」「費用の目安や契約の流れを教えてほしい」といった疑問にも丁寧に対応いたしますので、お気軽に無料相談をご利用ください。










