現代では、LINEFacebookX(旧Twitter)など、多くのSNSが生活の一部となっています。ふとした日常のやりとりや写真、つぶやきや告知といった情報は、私たちが歩んできた軌跡を映し出す「デジタル資産」と言えるでしょう。

 

しかし、自分の死後にそれらSNSアカウントをどう扱うか決めていないと、アカウントの不正利用や遺された家族が対応に困るなどの問題が生じる可能性があります。こうしたトラブルを避けるために注目されているのが、死後事務委任契約にSNS関連の事項を組み込んでおく方法です。

 

ここでは、SNSサービスが提供する死後対応と死後事務委任契約でデジタル遺品を託すためのポイントについて説明していきます

 

SNSの死後対策が必要な理由

SNSは友人や家族とのコミュニケーション手段としてだけでなく、ビジネスや趣味、情報収集の場としても活用されています。投稿内容には個人情報や思い出の写真が含まれ、自分らしさが詰まった大切な空間と言えます。

 

しかし、適切な死後対策を行っておかなければ、自分が亡くなった際に以下のようなリスクが生じかねません

  • 不正アクセスによる乗っ取り
  • アカウント名でのスパム投稿
  • 遺族が知らないままタイムラインに残る個人情報

 

各主要SNSサービスにおける死後対応

それぞれのSNSやメールサービスには、ユーザーが死亡した場合の対応に関するルールやガイドラインが設けられています。生前対策として、以下の情報を押さえておきましょう。

 

GmailGoogleアカウント)

GmailGoogleアカウントの一部であり、同時にYouTubeGoogleドライブなどとも連携していますGoogleの公式サポートによると、遺族や代理人からの連絡を受け、適切であると判断した場合、アカウントを閉鎖したり故人のコンテンツを一部提供したりする可能性があると明言しています。ただし、次のような制限が設けられる点に注意しましょう。

  • ログイン情報(パスワードなど)を第三者に開示することはしない
  • アカウントの中身をすべて開示するわけではない

そのため、生前にGoogleアカウントの「アクティブ アカウント管理ツール」を設定しておくと、一定期間ログインがない場合に指定された人へ通知やデータが渡るようにでき、死後の混乱を防ぎやすくなります

 

Facebook

Facebookユーザーの死後対応が比較的整備されているSNSの一つだといえます。亡くなったユーザーの知人や家族が申請することで、「追悼アカウント」に切り替えることが可能なのです。追悼アカウントになると、自分のページに次のような機能が加わります。

  • 故人のプロフィールに「追悼」の表示が加わる
  • 友人が思い出を投稿できるスペースとして機能

逆に「アカウントを完全に削除してほしい」という場合は、生前に「死後のアカウント削除」を設定しておくことが有効です。死後事務委任契約の中で、この設定をどう活かすかを受任者と話し合っておくとよいでしょう。

 

X(旧Twitter

X(旧Twitterでは、故人のアカウントを停止・削除する手続きが用意されています。公式ガイドラインによると、「遺族もしくは遺産管理人」が必要書類を提出すれば削除申請が可能とされています。

 

死後事務委任契約で「受任者」に手続きを行う権限を与えることで、X側から遺族や管理人として認めてもらいやすくなるでしょう。ログイン情報をそのまま他人に伝える行為は規約違反の恐れもあるため、公式の手続きを踏むことが大切です。

 

Line

Line「一身専属型」のアカウントとされ電話番号と密接に紐付いています。そのため、携帯電話を解約し電話番号が再割り当てされると、以前のLineアカウントにはアクセスできなくなる可能性が高くなります

  • 生前にバックアップを取るかどうか
  • 死後にアカウントをどう扱うか(削除・データ保存・友人への連絡手段の確保など)

死後対応としては、上記の事柄を死後事務委任契約の中で細かく指示しておくことが賢明です。特に、家族や友人とのやりとりが詰まったトーク履歴は貴重な思い出となり得ます。「不要なら削除」「残したいならバックアップ」といった選択肢を明確にすることが必要でしょう。

 

生前にできる「死後のSNS」対策

SNSサービスによる死後対応について理解したところで、自分自身が生前にしておける対策について考えてみましょう。主に「死後事務委任契約の締結」と「生前整理」が候補に上がることが考えられます。

 

死後事務委任契約の締結

死後事務委任契約とは、「自分が死亡したあとに行ってほしい手続きを事前に決めておく契約」です。SNS上には、メッセージ・写真・動画・フォロワーリストなど、数多くの「デジタル遺品」が存在しますので、死後事務委任契約を締結する際は、以下のような内容を明確に示しておくと良いでしょう

  1. アカウントの閉鎖または削除
    • アカウントのログイン情報が必要かどうか
    • 削除手続きを誰が、いつ、どのように行うか
  2. 投稿データの保存
    • 写真やメッセージなどをバックアップしてほしいか
    • 遺族や友人に見てもらう予定があるか
  3. 追悼アカウント化の要否
    • Facebookのように「追悼アカウントを設定する」場合など

 

SNSの利用には、多くの場合メールアドレスが不可欠です。ログイン認証でメールが必要なサービスも多いため、メールアカウントの削除や保管方針についても契約書に記載しておくと安心です。

 

デジタル遺品のリスト化

SNSのほかにも、クラウドストレージやオンライン決済サービス、各種サブスクなど私たちが日常的に使うデジタルサービスは多岐にわたります

  • ID・パスワード一覧
  • メインで使っているメールアドレス
  • サブアカウントやサブスクの契約状況

これらを一元管理し、紙媒体や信頼できるデジタルツールに整理しておくと、死後事務だけでなく、万一の入院や認知症発症時にも役立ちます。

 

まとめ

SNSは私たちの生活に密着した「もう一つの居場所」であり、そこには思い出や重要なコミュニケーションが詰まっています。死後事務委任契約にSNSの閉鎖やデータの保存といった項目を盛り込むことで、自分が亡くなったあとでもアカウントが放置されるリスクを減らし、適切なタイミングで削除や追悼アカウント化を行いやすくなります。

 

生前にしっかりと契約内容を検討し、明文化しておくことは、残される家族や友人への大きな負担軽減にもつながります。当行政書士法人では、死後事務委任契約をはじめとするデジタル遺品整理や相続対策の相談を承っています。SNSアカウントの扱いを含めた包括的なサポートをご希望の方は、ぜひお気軽に無料相談をご利用ください。

 

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