高齢化と少子化が進むなか、家族のいない方や子どもの少ない方にとっては、「自分が亡くなった後の葬儀や法要、墓の管理を誰に任せればいいのか」という問題が大きな悩みとなっています。
ここでは、自分の葬儀を親族に託したいときの家族信託について説明していきます。
葬儀をはじめとする「祭祀」の内容
「祭祀」とは、葬儀・法要・墓所(お墓)や位牌の管理など、亡くなった後に必要な一連の弔いの行為を指します。具体的には下記の要素が含まれます。
- 葬儀(通夜や告別式)
- 法要(初七日・四十九日・一周忌・三回忌など)
- 墓所の維持管理(墓石の修繕費や年間管理料)
- 仏壇・位牌の管理
- その他供養活動(お盆・命日の供養)
こうした祭祀は、本来ならば配偶者や子が担うことが多いですが、家族構成によっては「誰に頼めばよいか分からない」「任せられる人がいない」といった問題が生じがちです。
遺言書で葬儀を依頼できるか
遺言書の作成にあたり、「葬儀は○○の寺で行い、墓は××に建ててほしい」といった葬儀に関する希望を記載することは可能です。しかし、遺言書は相続財産の分配について強い法的拘束力を持つのであり、祭祀の執行に関する希望を相続人に託すことを目的としていません。
したがって、遺言書に「祭祀に関する希望」を記載したとしても、次のようなリスクが残ります。
- 遺言書に「○○さんに祭祀を任せる」と書いても、実際にその人が行ってくれる保証がない
- 祭祀は継続的な負担(墓参りや法要など)を伴うため、受任者の負担が大きくなる
葬儀を親族に任せたいときの注意点
では、葬儀を親族に任せたい場合、どのような点に注意して依頼すべきなのでしょうか。
遺言書だけでは不確実
- 「負担付遺贈」で祭祀を任せる方法があるが、本当に実行してくれるか不明
- 遺産分割と違い、祭祀は長期間続くので継続的な負担が嫌がられるリスク
誰に任せるか
- 親族が近くにいても高齢だったり、遠方に住んでいたりして対応が難しい
- 時間や費用の問題で、見つからない可能性も
費用負担の不安
- 葬儀や法要、墓守にはある程度まとまったお金が必要
- 祭祀を引き受ける側からすれば、金銭的リターンがないと敬遠される恐れ
家族信託で葬儀を任せる方法
葬儀などの祭祀に関する希望を伝える手段として、遺言書は拘束力を持たないということがわかりました。代わりに家族信託という仕組みを利用すれば、祭祀を親族に任せることも可能です。
家族信託の仕組み
家族信託は、委託者(財産を持つ人)が自分の財産を「信託財産」として受託者(信頼できる親族や専門家)に管理・運用を任せ、その利益を受益者(委託者や指定した人物)に渡すしくみを指します。主に認知症対策や相続対策に活用されることが多いですが、祭祀を担う役割を組み込むことも可能です。
家族信託の特徴
- 信託財産は金銭や不動産など
- 委託者が元気なうちは財産管理を受託者に任せつつ、自分の生活や希望に反映
- 委託者が亡くなった後、特定の期間や目的で信託を継続し、定められた受託者が葬儀や法要費用を支払う など
家族信託で葬儀を依頼するためのしくみ作り
祭祀を家族信託に組み込むときは、大抵の場合次のような仕組みを作り上げます。
葬儀を任せるための家族信託のしくみ
- 信託財産:葬儀や法要、墓の維持管理に使うための「金銭」を信託財産とする
- 委託者:本人(自分が亡くなる後の祭祀を任せたい人)
- 受託者:親族や知人、あるいは寺の住職など、祭祀を請け負う意思のある人を指定
- 受益者:葬儀や法要で費用が使われるため、祭祀に関わる人物や相続人を設定する場合もある
- 帰属権利者:一定期間(たとえば七回忌など)祭祀が終わった段階で信託財産が残った場合、誰に帰属させるか決めておく
このように家族信託で祭祀を任せる仕組みをつくり、受託者が財産を管理・支出することで、葬儀や法要を確実に実行してもらえるようにするのです。
家族信託で葬儀を任せるメリット
祭祀に関して家族信託を利用するメリットを確認していきましょう。
受託者に対する「金銭的保証」ができる
葬儀や法要には相応の費用が伴います。家族信託を利用すれば、信託財産として用意した金銭について、受託者に管理・処分の権限を与えることで、受託者が報酬や実費を信託財産から正当に受け取れる安心感を得られるでしょう。
受託者は費用負担を強いられることなく、また受託者を帰属権利者に指定しておくことで、祭祀受託の対価として残余財産を報酬に充てることも可能です。
信託監督人を設定しておけば、金銭の使途が不透明になりにくいメリットもあります。
祭祀の長期継続を可能にする
たとえば「七回忌が終わるまで」という区切りを定めれば、その間は受託者が法要やお墓の管理費を定期的に支払うなど、「継続した祭祀」を保証できます。終了時期を明示しておくことで、受託者も負担内容を把握しやすく引き受けやすいでしょう。
遺言書との併用で相続問題もクリア
家族信託で祭祀費用や祭祀の方法を定めておき、一方で遺言書を活用して相続財産の分配を決めておけば、死後の手続きを総合的に整えることができます。受託者と遺言執行者を同じ人物にすることで、死後事務と相続手続きを一貫管理することも可能です。
家族信託を利用する際の流れ
家族信託を利用して祭祀を委託するときの流れを確認しておきましょう。
1.受託者の選定
- 親族や知人、あるいは寺の住職など、祭祀を担う人物
2.信託財産を決定
- 葬儀や法要、墓守に必要な金銭をどの程度用意するか見積もり
3.信託契約書の作成
- 祭祀の具体的内容:葬儀の場所・形式、法要の回数、墓地や永代供養の希望
- 信託期間と終了事由:たとえば「七回忌が終わったら終了」
- 報酬や残余財産の帰属先
4.公正証書化
- 強い証拠力を得るために、公証役場で契約書を公正証書にする手続き
5.実行と終了
- 委託者が亡くなったら契約が発効し、受託者が祭祀を実施
- 終了事由が生じたら、残余財産を帰属先へ引き渡す
まとめ
葬儀・法要、墓守などの祭祀を親族に依頼しようと考えた場合、遺言書でお願いするだけでは不足する面があります。遺言書の本来の目的は相続財産の分配指定にあり、祭祀に関する希望まで拘束力が及ばないからです。
しかし、家族信託を活用すれば金銭管理と祭祀の実行を契約として取り決めることができますので、遺言書の不足部分をしっかりと補うことができるでしょう。
「子がいない」「家族が遠方にいる」「親族に負担をかけたくない」などの理由から、自分の葬儀や法要について不安を抱いている方は、家族信託による祭祀委任を検討してみてはいかがでしょうか。受託者の候補が思いつかない場合、法律の専門家(行政書士・弁護士など)に依頼する方法もあります。
弊社では、委任者の背景や希望をしっかり聞いたうえで、最適な家族信託プランをご提案いたします。無料相談をご用意しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。自分の死後、葬儀や法要が滞りなく行われ、想いがきちんと汲み取られるよう、元気な今こそ準備を整えておきましょう。










