任意後見人は、本人が慎重に選んだ人物であっても、時間が経つとその適任性が疑問視されることがあります。
万が一、任意後見人が本人にとって不適切であることに気づいた場合、解任する方法はどのようなものなのでしょうか?また、後見契約自体を変更して対応することはできるのでしょうか。
この記事では、任意後見契約の変更可否と後見人の解任手続きについて、詳しく解説します。
任意後見契約の内容は変更できるのか
契約時は問題ない判断能力を持っていたとしても、実際に低下するまでに数年~数十年かかることもあります。ライフステージの変化や人間関係の変化などで、「代理権の範囲を変更したい」「受任者を変えたい」と思うのは不自然なことではありません。
ポイントは「新契約の締結」
現行の法律上、既存の任意後見契約の一部内容だけを修正するという方法は認められていません。代理権の範囲を追加・変更したい場合、いったん旧契約を解除し、あらためて新しい契約を結ぶ必要があります。
追加の代理権を設定したい例
- もともと財産管理のみの代理権だったが、身上監護(介護施設との契約など)も付与したい
- →古い契約を解除→新しい任意後見契約として公正証書を作成→法務局で登記
任意後見受任者は変更できるのか
任意後見受任者を別の人に変えたい場合も、契約解除→新契約となります。ただし、注意すべきはどの段階(監督人選任前か後か)で変更を行うかで手続きが異なる点です。
任意後見契約を解除し、後見人を解任する方法
任意後見人の解任には、任意後見契約を終了させる必要があります。
この契約解除の手続きを経ることで、後見人の任を解くことが可能です。
任意後見人には、民法第644条に基づく「受任者の注意義務」や、本人が認知症である場合などに求められる「身上配慮義務」が課せられています。
もしこれらの義務を適切に果たしていない場合、解任事由が発生する可能性があります。
任意後見人の解任事由
任意後見人を解任するためには、特定の事由に該当することを証明しなければなりません。
以下に挙げる事由が認められると、家庭裁判所に対して解任を申し立てることができます。
1.不正行為
任意後見人が委任者の財産を不正に流用したり、横領した場合、その行為は「不正行為」と見なされ、解任事由となります。
これは任意後見人の信頼を大きく裏切る行為であり、解任手続きが進められます。
2.著しい不行跡
任意後見人は、本人の生活全般を見守る責任があり、品位を保つ必要があります。
特に財産管理や身上監護を適切に行わない、または不適切な態度・行動を取る場合、これが「不行跡」として解任事由となります。
例えば、任意後見人が本人に対して不適切な行動を取るなどの場合です。
3. その他後見業務に適さない事由
任意後見人が本来遂行すべき業務を怠り、本人に不利益をもたらした場合、解任事由となります。
また、家庭裁判所の命令に従わない、必要書類を提出しないなどの行為も、解任の理由に該当します。
最も一般的なケースとしては、任意後見人と本人との関係が破たんし、本人が虐待を受けている場合などです。
任意後見契約の解除手続き
任意後見人を解任するためには、任意後見契約を解除する必要があります。任意後見契約を解除する手続きは、任意後見法第9条に基づき行います。
具体的には、公証人の認証を得た書面で手続きを進めることが求められます。
任意後見契約の解除条件
任意後見契約解除の条件としては、以下の通りです。
契約解除前
任意後見監督人が選任される前であれば、本人または任意後見人はいつでも契約解除を行うことができます。
契約解除後
任意後見監督人が選任された後に契約を解除する場合、正当な理由が求められ、その後、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
任意後見人の解任手続きの流れ
任意後見人を解任するための手続きは、具体的には以下のような流れになります。
- 証拠の収集: 解任事由に該当する証拠を集めます。これは非常に重要なステップです。
- 家庭裁判所への申し立て: 必要な証拠を添えて家庭裁判所に解任の申し立てを行います。特定の書式は存在しないため、自分で適切な内容をまとめる必要があります。
- 家庭裁判所の審査: 提出された証拠をもとに家庭裁判所が解任を審査し、判断を下します。
解任手続きに関するアドバイス
任意後見契約は、一度締結すると簡単に「一部だけ」修正できない性質があります。代理権の範囲変更や受任者変更をしたいときは、旧契約を解除して新たな契約を結ぶのが基本となる点に注意しましょう。また、任意後見人の解任は法的に慎重に進める必要があるため、専門家に相談することをおすすめします。
書面の作成や証拠の整理など、細かい手続きを適切に行わないと、解任手続きがスムーズに進まない可能性があります。
もし疑問点や不安な点があれば、専門の弁護士や司法書士に相談し、適切な手続きを進めましょう。
信頼できる専門家とともに、しっかりとした解任手続きを行うことが重要です。










