認知症や障害などで十分な判断能力を持たない人を支援するために利用されるのが、成年後見制度です。成年後見人には、本人(被後見人)の代わりに財産管理や身上監護などを行う重大な役割が求められます。

 

では、本人の親族は成年後見人になることはできるのでしょうか?

 

ここでは、親族が成年後見人になれるか、親族が後見人になることのメリット・デメリットはどうか、説明していきます

 

親族は成年後見人になれるのか?

成年後見制度では、家庭裁判所が被後見人に最適な後見人を選任します親族を「成年後見人等候補者」として申立書に記載しても、家庭裁判所が「適切でない」と判断すれば、まったく別の人物(専門家など)が選任される可能性があります

 

親族が後見人になるための提出書類

親族が成年後見人になるためには、家庭裁判所へ提出する後見開始の申立書に、後見人を希望する家族の氏名を「後見人候補者」として明記する必要があります。申立人自身が自薦で名乗りを上げても問題ありません。

ただし最終選任家庭裁判所あり、本人家族意向そのまま通るない注意しましょう

後見開始申立書

成年後見制度の利用申立てを行うための大切な書類です。被後見人となる人物、申立理由、後見人候補者など必要事項を記入します。

 

後見人等候補者事情説明書

親族が後見人候補となる場合、この書類に必要事項を記入して資産状況や職業情報を提供します。

 

戸籍謄本や収入証明など

候補者自身の経歴や経済状況などを裁判所がチェックし、総合的に判断します。

 

医師による診断書

候補者の健康状態や判断能力などを確認するために、医師に診断書を書いてもらいます。

 

財産目録、収支予定表

財産目録で候補者の資産状況を確認し、収支予定表で候補者の生活状況を確認します。

 

親族関係図と同意書

家系図とともに「親族が後見人候補者となることに対する他親族の意見」を確認します。

 


親族だからといって必ず選ばれるわけではなく、書類審査・面接・意見照会などを経て本当に適任かどうかを裁判所が厳しく審理します

 

親族が成年後見人に選任されにくいケースとは

以下のような事情があると、親族後見人は不適格と判断されやすい傾向にあります。

 

候補者自身に問題ありと判断される場合

  • 被後見人への暴力・虐待歴
  • 金銭トラブル歴(横領・使い込みなど)
  • 候補者自身の経済状況や家族構成に問題がある
  • 居住地が被後見人と遠く離れすぎており、十分な身上監護が難しい

 

親族間の争いが想定される場合

申立書に記載された親族が別の親族と深刻な対立をしている場合や、意見書への回答を拒否されているケースでは、公正な後見業務が行えないとみなされやすく、裁判所が専門家後見人を選任する可能性が高まります

 

被後見人の事情が特殊な場合

被後見人に大量の財産があったり訴訟など特定の法的問題を抱えていたりする場合や、医療・福祉のサポートが複雑である場合などは、親族よりも弁護士・司法書士・社会福祉士など専門知識を有する人物が選ばれる傾向があります

 

家庭裁判所が後見人を選ぶ際の基準

家庭裁判所はどのような基準をもって後見人を選ぶのでしょうか。

 

成年後見人になれない人(欠格事由)

法律上、以下に該当する人は後見人に選ばれません。

  1. 未成年者
  2. 過去に成年後見人を解任された人
  3. 破産者(復権していない)
  4. 被後見人に対して訴訟を起こした人、またはその配偶者・親子
  5. 行方不明者

 

成年後見人に親族を選任する際の主なポイント

親族を成年後見人に選任することが適切かどうか、以下の点が考慮されているようです。

 

被後見人との良好な関係

  • 日頃から被後見人の世話をしているか、トラブルがないかなど

 

財産管理能力

  • 被後見人の財産規模に応じて、適切にお金の出入りを記録・報告できるか

 

身上監護の実行力

  • 医療や介護サービスの手配、契約締結など、継続的に被後見人を守れるか

 

公平性・中立性を保てるか

  • 親族間に争いがある場合は公正な業務が難しいと判断されることも

 

候補者の年齢や健康状態

  • 長期的に後見事務を継続できる体力・精神力が求められる

 

親族が成年後見人になるメリット・デメリット

親族が成年後見人になった方が良さそうに思えますが、実は親族だからこそのメリット・デメリットが存在します。

 

親族が成年後見人になるメリット

被後見人にとって安心感が高い点は大きなメリットだといえるでしょう。被後見人にとって親族は顔見知りであり、日頃からの関係性があるため心理的負担が少ないと考えられます。

 

また、報酬が原則発生しない(または低額)点にも注目されます。親族後見人は無報酬が原則とされるため、費用負担が軽く済みます。

 

親族が成年後見人になるデメリット

一方で、親族という近い存在だからこそ生じるリスクも存在します。

 

たとえば、財産の使い込みリスクがそれに当たります。親族であるがゆえにお金の管理がゆるみ、不正が起こる可能性は否定できません。

 

「親族だから」ということから、被後見人の介護・医療・契約事務など多岐にわたる業務を親族が担うことになりやすく、業務負担が大きくなりかねません

 

最も注意したいのが親族間トラブルの火種になりやすいという点です。後見人ではない他の親族が「管理が不透明だ」と疑うなどした場合、こじれて紛争に発展するリスクもあります

 

専門家が成年後見人になるメリット・デメリット

あえて第三者を後見人とすることによるメリットとデメリットについても確認していきましょう。

 

専門家が成年後見人になるメリット

法律の専門家や福祉の専門家などを後見人とする場合、専門的知識や経験に裏付けられた支援が得られるため大変心強く感じられるでしょう。

 

また、専門家は報酬を受けて後見人を引き受けるため、客観性・公正性を期待しやすい点も安心です。

 

なにより、親族の負担が軽減されるメリットは非常に大きなものだといえます。煩雑な手続きや事務作業は専門家が担うため、親族のストレスが少なく済みます

 

専門家が成年後見人になるデメリット

専門家を後見人とすることによるデメリットも存在します。

 

たとえば、専門家に後見人を依頼すれば報酬が発生します。専門家後見人への報酬は毎年数万円~数十万円ほどかかると言われており、決して少ない支出ではありません

 

また、親族ではないため被後見人との間に心の距離があることも見過ごせない点です。親族ほど被後見人の生活実態を把握しにくいなど、コミュニケーション面で努力を要することも理解しておきましょう。

 

まとめ

家庭裁判所はこれらを総合的に判断し、親族か専門家かを選びます。親族が後見人になりたい場合は、「被後見人の利益を守れるか?」という視点を自問したうえで、さらに他の親族との合意を形成することがとても大切です。

 

当行政書士法人では、後見制度・死後事務委任契約・家族信託など、多様な生前対策に関するご相談を承っています。一人で悩まず、まずは無料相談で状況を整理し、最善と思われる生前対策を見つけてみましょう。

 

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