生前対策として注目される死後事務委任契約は、本人が亡くなった後の手続きを円滑に進めるための契約です。
家族や親族と疎遠だったり遠方に住んでいたりする場合、自分の死後に関する諸手続きについて不安を抱える方は少なくありません。死後事務委任契約を結んでおけば、葬儀や火葬、役所への届出、遺品整理、施設の退去手続きなどを受任者がスムーズに行うことができます。
ここでは、死後事務委任契約が発効してから受任者が実際に行う業務の流れについて説明していきます。
死後事務委任契約後の全体的な流れ
死後事務委任契約を締結しておくと、本人の死亡後、契約書に記載された条項にもとづき受任者が業務に着手します。契約書の内容によって多少違いはあるものの、以下の流れで手続きが進むのが一般的です。
- 死亡届の提出・火葬許可申請
- 葬儀や火葬に関する手続き
- 役所への各種届出と社会保険関連の手続き
- 水道・電気・ガス・通信サービス等の解約・清算
- 会社の退職手続き(該当する場合)
- 遺品整理および賃貸物件の退去手続き
以下では、それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。
【ステップ1】死亡届の提出
受任者は、委任者(契約者)が死亡した日を知った日から7日以内に役所へ死亡届を提出しなければなりません。死亡届を受理してもらうことで火葬許可申請が可能となり、火葬や葬儀の準備が進められます。
なお、実務的には葬儀社が死亡届や火葬許可申請を代行することも多いです。ただし、死後事務委任契約に「死亡届提出の代行」が明記されている場合、受任者が正式な手続き責任者となる点に注意しましょう。
火葬許可申請
死亡届を提出すると同時に火葬許可申請を行います。許可書がなければ火葬できないため、受任者は必要書類を揃えて早めに手続きを済ませる必要があります。葬儀や火葬を迅速に行うためにも、死亡届提出と火葬許可申請をセットで行うのが一般的です。
【ステップ2】葬儀や火葬に関する手続き
死後事務委任契約には、「どのような葬儀を行ってほしいか」「どの葬儀社を選ぶか」などが具体的に書かれていることがあります。契約で定めた葬儀形態に従って、受任者は以下の業務を担います。
- 関係者や親族への連絡
- 家族・親族・友人への連絡を行い、希望するなら通夜や葬儀に参列できるよう通知
- 喪主の依頼
- 葬儀社や親族と相談し、形式的な喪主を決める(場合によっては受任者自身が喪主を務めることも)
- 葬儀プランの決定と進行管理
- 葬儀の規模や費用、宗教儀式の有無などを契約内容や故人の希望に合わせて手配
火葬・納骨や散骨までの流れ
葬儀が終わったら火葬を行い、遺骨を墓地や納骨堂に納めるか、散骨を希望している場合は散骨手続きを行います。もし契約書に「永代供養の手配」「墓石の建立」などの希望が盛り込まれていれば、それに沿って進める必要があります。
【ステップ3】役所への各種届け出と社会保険関連の手続き
死後事務委任契約で「役所への各種届出」を受任者が行うと定められている場合、下記のような手続きも受任者が担当します。
- 国民健康保険:死亡日から14日以内に役所へ資格喪失届を提出し、保険証を返却
- 社会保険(会社員など):会社が手続きを行うため、受任者は保険証を返却すれば原則完了
- 国民年金・厚生年金:
- 国民年金は死亡日から14日以内に資格喪失届を役所に提出
- 厚生年金は会社が手続きを行うことが多い
所得税の準確定申告
もし、委任者(故人)に事業所得などがあり、確定申告が必要だった場合、受任者は死亡日の翌日から4か月以内に「所得税の準確定申告」を行います。納税義務が生じるかどうかの判断も含めて、税理士などと相談しながら進めると安心です。
【ステップ4】水道・電気・ガス・通信サービス等の解約・清算
家屋に住む人が亡くなると、電気・ガス・水道、電話、インターネットなどを継続して使う必要がなくなるため、早急に解約手続きを行いって利用料金を止める必要があります。受任者は故人の住所や契約情報を調べ、必要な業者へ連絡して解約の意思表示と精算を行うことが大切です。
運転免許証やクレジットカードの返納・解約
運転免許証やクレジットカードなども、対象者が亡くなった時点で失効もしくは解約が必要になります。特にクレジットカードは年会費などが発生するケースがあるため、速やかにカード会社へ連絡して解約手続きをしてください。
【ステップ5】会社の退職手続き(該当する場合)
委任者が働いていた場合、受任者は会社に対して「死亡した」旨を速やかに通知します。社会保険や厚生年金、所得税の年末調整など、会社側で進める手続きがあるため、保険証や社員証などを返却し、必要書類のやり取りを行います。
【ステップ6】遺品整理と賃貸物件の退去
故人が残した持ち物は相続財産となりますが、形見分けや不要品の処分など、遺品整理が必要になります。死後事務委任契約では、「家財道具の整理や処分までを受任者が行う」と定めることも可能です。ただし、相続人が存在する場合、遺品の扱いについては相続人の同意が欠かせません。
賃貸物件の場合は速やかな退去手続き
故人が賃貸物件に住んでいた場合、家主・管理会社への連絡と退去日の調整が必要です。遺品整理や原状回復の手配を早めに進めないと、家賃が発生し続けてしまうので、受任者は迅速に対応しましょう。
まとめ
死後事務委任契約を締結しておくと、葬儀や火葬、公共料金の解約や遺品整理まで、委任者が亡くなった後のさまざまな手続きを円滑に進められます。
当行政書士法人では、死後事務委任契約だけでなく、任意後見契約や遺言書作成などの生前対策にも注力し、組み合わせサポートをご提案しています。ご希望に合った対策プランを一緒に考えるためにも、ぜひ無料相談をご利用のうえ、お気軽にお問い合わせください。










