高齢化や医療技術の進歩に伴い、「最期をどのように迎えたいか」を生前のうちに考える人が増えてきました。たとえば、「意思表示ができなくなったときには延命治療を望まない」と明確にしておきたい方も少なくありません。しかし、医療現場では延命治療が基本となっている場合が多く、本人の意思を正しく伝えられないまま延命処置が施されるケースも目立ちます。

 

そこで注目されるのが、「尊厳死宣言」を公正証書の形で作成しておく方法です。

 

ここでは、尊厳死宣言公正証書の法的な役割と作成の手順などについて説明していきます

 

「尊厳死宣言」とは何か

尊厳死宣言とは、不治の病や重度の後遺症によって意思表示ができなくなったときに、人工的な延命措置を行わず自然な死を受け入れてほしいという意思を示すための宣言です。医療従事者や家族に対し、「延命治療は希望しない」という本人の意向を伝える重要な手段となります。

 

家族や医療現場が直面する困難

実際、延命治療を拒否する意思が本人にあっても、口頭だけでは医療側が「この患者は本当に延命を望んでいない」と判断できない場合が多いのが現実です。また、意思表示ができない状態の患者に代わって、家族が苦渋の決断を下すのは大変な負担となります。

 

明確な文書がなければ、結果的に延命治療が施され、本人の望んだ最期から遠ざかってしまう懸念があるのです。

 

公正証書で作る理由

尊厳死宣言を公正証書で作成しておくと、公証人が本人の意思を確認し、公文書としての信用力を与えます。私文書と比べて以下のメリットがあります。

 

【メリット1】証明力が高い

  • 公証人が本人の意思を直接確認し作成するため「意思が明確」と認められやすい

 

本人の尊厳を守れる

延命治療を望まない意思があっても、すでに自身のコミュニケーション能力が低下していた場合、周囲に自分の本心を伝えることが困難だといえます。しかし、元気なうちに尊厳死宣言を公正証書にしておけば、客観的に確認可能な形で本人の希望を示せるため、自らの生死に係る尊厳を守りやすくなります。

 

治療方針を円滑にする

医療現場では、生命を救うのが基本的な理念であるため、患者本人が何も書面を残さない限り「医療拒否」を認めにくい場合があります。しかし、公正証書で尊厳死宣言を示すことで「延命治療を拒否してほしい」という本人の意思が立証され、医師や看護師も方針を決めやすくなります

 

【メリット2】簡単に否定されない

  • 文書の真正性を第三者(家族や医療関係者)が否定する余地が少ない

 

【メリット3】後日トラブルになりにくい

  • 家族間で「本当に本人が望んでいたか?」と争いが起こりにくい

 

【メリット4】家族の負担軽減

長期的な延命措置がなされると、金銭面での負担や、介護・看護における身体的・精神的な負担が大きくなります。事前に尊厳死宣言を公正証書に残しておけば、家族が「最期はこうしてあげたいが、本人の意思を無視することになるかもしれない」と悩む場面が少なくなり、家族の苦悩や対立を回避できるのです。

 

尊厳死宣言公正証書の作成方法

尊厳死宣言は公正証書として作成することが勧められます。

 

公正証書作成の流れ

公正証書の作成手順を確認しておきましょう。

 

公証役場への事前相談・予約

  • 公証人とのスケジュールを調整し、必要書類を確認

 

本人の意思確認

  • 公証人は本人に直接面談し、延命治療拒否の意思が明確かを確認

 

公正証書案の作成・確認

  • 条項をチェックし、訂正点を話し合う

 

署名押印・完成

  • 本人と公証人が署名捺印し、公正証書が完成

 

必要書類や費用

  • 本人確認書類:運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど
  • 手数料:数千~数万円程度(公証人の手数料規定による)
  • 印鑑:実印が望ましいが、詳細は公証役場に要確認
  • 状況に応じた書類:医療情報や家族構成の確認が必要な場合も

 

尊厳死宣言公正証書の内容

尊厳死宣言公正証書には、一般的に以下の点を盛り込みます。

 

延命治療拒否の明確化

生命維持装置の使用や人工呼吸器、胃ろうなどを一切希望しない旨を伝えます。

 

緩和ケアの希望

苦痛を和らげるための医療(緩和ケア)を積極的に望むかどうかを伝えます。

 

代理人や代弁者の指定

本人が意思表示できないときに、医師や家族に対しこの文書を代わりに提示する人物を決めておきます。

 

保管方法や医療現場への提示方法

家族や信頼できる人に保管してもらい、いざというとき医療従事者へ迅速に提示できるようにしておきます。

 

注意点と補足

尊厳死宣言公正証書は本人の尊厳を守ったり関係者にかかる負担を軽減したりすることができるため、できるだけ作成しておいた方がいい文書になります。しかし、作成にあたり次の点に注意するようにしましょう。

 

法的拘束力と医療現場での実際

尊厳死宣言公正証書は患者の意思を示す強い証拠力を持ちますが、延命拒否が即座に医師を拘束するとは限りません医師法などの医療倫理や病院の方針にも配慮が必要になることがあります

 

家族や代理人への周知

公正証書があっても、家族が知らなければ提示できません家族・親族へ尊厳死宣言公正証書作成の事実を伝えておくことが大切です。

 

更新・撤回

元気なうちであれば、公正証書を作り直して古い宣言を撤回することが可能です。医師の意見や自身の健康状態など変化に応じて見直していくことも必要になってくるでしょう。

 

遺言書との混同に注意

遺言書は財産分配など相続面の指示を行う文書であり、延命治療の拒否を法的に拘束する効力は持ちません。尊厳死宣言公正証書と遺言書は用途が異なる点に注意しましょう。

 

まとめ

「延命治療を望まない」という意思を確実に伝えるうえで、尊厳死宣言を公正証書の形で残すことは非常に効果的です。公正証書は公証人による公文書であり、本人の真摯な意思が十分に確認された文書として、医療従事者や家族の不安を和らげるとともに、法律上の信頼性を高めます。

 

尊厳死宣言公正証書はあくまで生前対策の一部であり、財産相続や死後事務などの他の準備とも併せて検討することがおすすめです。弊社では生前対策について幅広く対応していますので、ぜひ無料相談をご利用ください。いざというときに「どう生きたいか」「どこまで治療を望むか」を明確にしておくことで、本人が安心して日常を過ごし、ご家族の負担も大きく軽減されるでしょう。

 

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