特に一人暮らしの高齢者を中心として、多くの人が「自分の死後、誰が葬儀や住居解約、遺品処理などの費用を負担してくれるのか」という不安を抱いているかもしれません。
そこで役立つのが、葬儀や遺品整理など相続以外の手続きを生前に第三者へ任せることができる死後事務委任契約という仕組みです。しかし、それら死後事務にかかる費用をどのように準備すればよいかわからない、という人も少なくありません。
ここでは、死後事務の費用を事前に委任者が用意して受任者に預ける「預託金方式」とそのメリット・デメリットについて説明していきます。
死後事務に必要な費用例
人が亡くなった後、相続手続き以外にも多くの作業が発生します。代表的な例として、下記のような死後事務が挙げられます。
- 葬儀や火葬の手配
- 納骨や永代供養の手続き
- 入院費・施設利用料などの精算
- 賃貸物件の退去手続き、家賃の精算
- 遺品の整理・処分
- 電気・ガス・水道・電話など各種サービスの解約
- ペットの譲渡先・飼育先との手続き など
これらの手続きは数が多く手間もかかるため、元気なうちに誰かに頼んでおく必要があるでしょう。特に、身寄りのない方や子どもが遠方に住む方などは、あらかじめ準備しておかなければ死後事務が滞ってしまいかねません。
死後事務委任契約と費用準備
死後事務委任契約は、自分の死後に必要なさまざまな作業を、受任者(家族や専門家など)に任せる「生前契約」です。ただし、葬儀や片づけ、各種サービスの清算手続きなどを行う際、まとまった出費が発生する点に注意しましょう。問題は、誰が・どのように費用を負担するかということになりそうです。
死後事務委任契約と預託金方式
死後事務委任契約では、委任者(契約者本人)が元気なうちに「預託金」という形で受任者へ資金を渡し、受任者は預託金から葬儀費用や遺品整理費用などを支払うことができます。これを「預託金方式」と呼びます。
預託金方式のイメージ
預託金方式の活用イメージについて整理しておきましょう。
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- 死後事務委任契約締結時に、委任者があらかじめ概算しておいた必要経費相当分を、受任者に現金あるいは口座振込で預ける
- 委任者が亡くなった後、受任者は契約書に記載された死後事務を行い、その費用を預託金から支払う
- 余った預託金があれば、委任者の指定した相続人などへ返却する
預託金の目安
死後事務のなかでも特に大きな出費となるのが葬儀費用です。
- 100万円以上かかるケースも多い
- 家族葬や火葬式だけなら数十万円程度に抑えることも可能
加えて、家賃の清算・遺品整理・施設の入居金の精算などを含めれば、さらに金額が上乗せされることがあります。状況によっては100~150万円程度の預託金を用意することも珍しくありません。
預託金方式のメリットとデメリット
あらかじめ「預託金として受任者に必要な資金を渡しておくこと」は理に適っていますが、預託金方式にはメリットとデメリットの二面がありますので、どのようなことが起こり得るか理解しておきましょう。
預託金方式のメリット
預託金方式を採ることによるメリットについて確認しておきましょう。
契約内容がシンプルでわかりやすい
- 受任者にあらかじめ概算した金額を預けるため、受任者は何にどのくらいお金がかかりそうか把握しやすく金銭管理もしやすい
死後手続きの費用がスムーズに支払われる
- 受任者が立て替える必要がないため、支払い手続きの手間が軽減される
契約に預託金条項も盛り込むことで後のトラブルを回避しやすい
- 葬儀社や遺品整理業者の支払い方法も事前に決まるので安心度が高い
預託金方式のデメリット
預託金方式に伴うデメリットについても確認しておきましょう。
高額な金銭を前もって預けることへの心理的負担
- まとまった金銭を他の人物に渡すことへの抵抗感や不安が生じやすい
受任者による不正利用・使い込みのリスク
- 信頼できる人物を受任者にしたとしても、不正が起きる可能性は排除できない
預託後、実際に死後事務を行うまで時間が空くことによる不安
- 長期間にわたって受任者にお金を預けるため不安が生じやすい
預託金方式以外の費用準備方法
死後事務委任契約における費用面での準備として、預託金方式が最も適切であると考えられていますが、他の方法はないのでしょうか。預託金方式以外に選択されている代表的な方法は次の通りです。
1.生命保険の保険金を使う方法
死後事務委任契約の受任者を生命保険の受取人に指定しておき、委任者の死後に給付される死亡保険金を死後事務に充てる方法があります。
死亡保険金は比較的早く支払われる傾向にあることから、死後事務をスムーズに行うだけのまとまった資金を確保できる点は、受任者にとってとても安心でしょう。一方、保険金受取人を受任者にすることで他の相続人と揉めることがないよう、事前にすべての関係者から理解を得ておく必要があるといえます。
2.遺産から費用を払う方法
遺産の一部を死後事務の経費と位置付け、遺言書に「死後事務の費用として○○円を受任者へ遺贈する」などと記載しておく方法もあります。
遺贈という方法を使うことで、生前に大金を受任者へ渡さなくても済む点は大きなメリットかもしれません。ただし、遺贈を行う場合は受贈者が納める相続税や他相続人の遺留分の問題も絡んでくる可能性があります。特に、相続人が複数いる場合はトラブルに発展しやすいリスクがある点にも注意しましょう。
受任者への不安を減らすには
死後事務の遂行に必要な資金をどのような形で確保できるか、受任者としては非常に心配に感じる点だといえます。また、保険金や遺贈財産に関して他相続人との揉め事が起こる可能性をできるだけゼロにしておきたいという気持ちも湧くでしょう。
受任者が抱えてしまいがちな問題を克服するにはどうしたらいいのでしょうか。
不安な場合は専門家への依頼も
専門家によるサポートを受けたり、契約書に必要事項の詳細を記載したりするなど、以下のような準備も必要になってきそうです。
- 法の専門家を受任者にする
- 行政書士や弁護士など、職業上の信用を前提に預託金を渡しやすい
- 不正使用のリスクが少なく、契約書作成や費用見積もりでも頼れる
- 金銭の管理ルールを契約書に明記
- 「預託金は専用口座で保管し、死後事務以外の目的に使用しない」など分別管理を徹底
- 不正使用に対する違約金や罰則規定を設けることも検討可能
- 家族や親族にも契約の存在を知らせる
- 周囲が契約の存在を知っていれば、使い込みなどに気づく可能性が高まり、不正リスクを抑えられる
まとめ
「死後事務の費用」は決して小さくありませんが、適切な契約形態を取れば、自分の死後に周りの人が混乱せず、希望通りの整理をしてもらうことが可能となります。
当行政書士法人では、死後事務委任契約の作成サポートや預託金方式を含めた費用面のアドバイスなどを行っています。委任者となる方の背景事情などを踏まえて最適なプランを一緒に考えさせていただきますので、ぜひお気軽に無料相談をご利用ください。










