近年、高齢者を狙った詐欺事件が相次いで報道されており、財産や年金をだまし取られる被害が増加していることがわかります。特に、一人暮らしや判断能力の衰えた方はターゲットにされやすく、「気づいたら多額の損失を抱えていた」というケースも少なくありません。
こうした詐欺リスクへの備えとして、家族信託という手段を活用し、家族や信頼できる人に財産管理を託すことが有効です。
ここでは、家族信託の仕組みを用いて高齢者の財産を詐欺被害から守る方法について説明していきます。
高齢者が詐欺で狙われる理由
高齢者は詐欺被害に遭いやすいといわれますが、そこには2つの理由があると考えられます。
1.相談相手の不在や判断能力の低下
たとえば配偶者を亡くした後に一人暮らしをしている高齢者は、周囲に相談できる相手がいないまま判断を迫られ、詐欺に巻き込まれてしまうケースが少なくありません。また、判断能力が低下している状態では適切な対応ができないこともあり、結果として被害に遭うこともあるのです。
2.狙われやすいのは自宅や貯金
高齢者が長年かけて築いた自宅やまとまった貯蓄・年金は、詐欺グループにとって格好の標的になり得ます。「投資で大きく増やせる」「親族のためにお金が必要」といった甘い言葉にだまされ、大切な資産を失ってしまう事例が後を絶ちません。
詐欺対策目的での生前贈与の注意点
自分の財産を信頼できる自分の家族に生前贈与すれば、詐欺被害を回避できるかもしれませんが、次のような懸念が生じます。
生前贈与に伴う税金負担
「高齢者が自分の財産を家族に生前贈与し、必要な生活費だけ受け取る」という方法も考えられますが、ここで生前贈与として扱われると贈与税がかかる可能性があります。基礎控除額(年間110万円)を超える贈与は課税対象となるため、多額の財産を一度に渡すのは注意が必要です。
認知症発症後は売却や契約が困難に
「名義を変えずに家族が代理で売却する」という方法もありますが、所有者本人が認知症になった場合、法律行為に必要な意思表示が難しくなることも考えられ、契約手続きそのものが進められなくなる可能性も出てきます。
結果として、高齢者本人が多額の資産を手元に持ち続ける状況が続くことになるため、万が一の詐欺リスクも相対的に高まりやすいといえそうです。
家族信託を活用して詐欺被害を防ぐメリット
家族信託では、委託者(高齢者本人)が持つ財産の名義を受託者(家族など信頼できる人)に移すため、詐欺を行う者が高齢者本人をだまして財産を引き出すことが難しくなります。
高齢者本人の財産を受託者が管理し、本人は受益者として生活費や医療費・介護費などを得ていくしくみです。
受託者による資産管理は犯罪に遭いにくい
詐欺グループが狙うのは、高齢者が自由に使えるお金です。家族信託により、必要最低限の金銭だけを高齢者本人が管理し、大半の資産は受託者が管理するようにしておけば、詐欺にあっても被害額を最小限に抑えられるでしょう。
また、すぐには使わない預貯金や不動産を信託財産に含めておけば、詐欺被害を予防しやすくなります。
成年後見制度とは異なるメリット
高齢者の財産を管理する手段として「後見制度」もありますが、任意後見制度を使う場合は後見監督人への報酬が発生する点などがデメリットになるといえます。
一方、家族信託では、信託監督人を任意で付けるにしても報酬負担を柔軟に決められますし、契約内容も比較的自由に設計できます。
【事例】Xさんが家族信託で詐欺リスクを回避した方法
Xさんの事例を参考にしてみましょう。Xさんは妻を亡くして一人暮らしをしており、数年前から判断能力が徐々に衰えてきていました。知人が詐欺被害に遭ったことを聞いて、自分も狙われるのではと心配は深まるばかりです。
Xさんは土地・建物・現金などの財産を所有してしたので、今後は息子のYさんに財産を管理してほしいと考えていました。
家族信託の構成
Xさんのケースで家族信託を活用する場合、次のような設計が考えられます。
- 信託財産:Xさんの不動産と金銭
- 委託者:Xさん(高齢者本人)
- 受託者:Yさん(息子)
- 受益者:Xさん(元気なうちはXさんが利益を受け取る)
- 第二受益者:Xさん死亡後に利益を受ける家族
- 帰属権利者:Yさんなど、信託終了時に財産を引き継ぐ人
家族信託が機能する流れ
Xさんのケースでは、家族信託は以下のような流れで機能していきます。
1.信託契約締結
Xさんが不動産と金銭を“信託財産”としてYさんに管理を任せる。
2.財産管理開始
不動産の名義をYさんに移し、預貯金は信託用口座で管理。
3.詐欺グループが近づいても被害を回避
Xさんは大きな資産を直接動かせないため、だまされて勝手にお金を引き出されるリスクが低い。
4.Xさんが亡くなった後
信託終了時に財産は帰属権利者へ移り、相続トラブルも軽減。
家族信託で対応しきれない身上監護は成年後見制度を活用
家族信託はあくまで財産管理をメインとした手段であり、身上監護(介護施設への入居契約など)を行うことはできません。
もし、介護施設との契約を代理で行うなどしたい場合は、成年後見制度を併用する必要があります。施設費や医療費の支払い原資である財産を家族信託で管理しておき、後見制度で法律行為の代理を任せることができれば、高齢者本人としても安心でしょう。
まとめ
家族信託を活用して資産管理を家族に任せておけば、高齢者が詐欺のターゲットになったとしても、多額の財産を簡単に失うリスクをぐっと下げられます。また、認知症などで判断能力が低下した後の対応を考えておく意味でも有効です。
もし、「自分や家族が詐欺の標的になるかもしれない」「認知症になったときの財産管理を整えたい」といった心配がある方は、ぜひ家族信託の専門家に相談してみてください。
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