家族信託契約を結ぶと、委託者が持つ財産を「信託財産」として受託者に管理を任せることができます。この仕組みは生前対策として活用されるケースが増えていますが、不動産を信託する場合には必ず名義変更(登記)が必要です。不動産の管理・運用には「誰が名義人なのか」が重要になるため、所有権移転登記と信託登記を的確に行わなければなりません。
ここでは、家族信託における不動産の所有権移転登記と信託登記について説明していきます。
家族信託契約における不動産登記は「義務」
信託法では、受託者は信託財産と自身の固有財産を厳格に分けて管理しなければならないと定められています。分別が曖昧だと、受託者が不動産を勝手に利用・処分したり、相続や売買の際にトラブルが生じたりするリスクが高まるからです。
不動産を信託する場合、名義変更登記を行って「これは信託財産である」と対外的に示すことが必要なのです。
所有権移転登記と信託登記とは?
信託財産に不動産が含まれている場合、行うべき登記手続きとして、所有権移転登記と信託登記を挙げることができます。
所有権移転登記
所有権移転登記は、不動産の名義を委託者から受託者へ移す手続きです。家族信託契約で決められた財産が不動産であれば、以下のように登記を行わなければなりません。名義人が変わるのですから所有権移転登記は不可欠といえます。
- 家族信託契約締結時:委託者と受託者が共同で「所有権移転登記」を申請
- 信託期間中:受託者が正式な名義人となり、不動産を管理・運用
- 信託期間の終了時(または受託者の交代など):受託者と帰属権利者が共同で再度「所有権移転登記」を実施
信託登記
信託登記は、不動産が信託財産であることを示す登記です。以下のような情報が登記事項に加えられます。
- 委託者・受託者・受益者の氏名や住所
- 信託の目的や期間
- 受益者を指定する条件や方法
- 管理方法や終了事由など
信託登記は受託者が単独で行うことが可能です。所有権移転登記との違いに注意しましょう(所有権移転登記は共同申請)。
不動産の登記手続きのタイミング
信託契約の締結時や契約内容の変更時など、それぞれ必要な手続きを行わなくてはなりません。
信託設定時(信託契約締結時)の登記手続き
- 登記の内容:委託者→受託者への所有権移転登記、および信託登記
- 登録免許税:
- 所有権移転分については非課税
- 信託分の登録免許税は、土地なら固定資産税評価額の0.3%、建物なら0.4%
受益者変更があったときの登記手続き
- 登記の内容:受益者の相続開始や贈与などにより受益者が変わる場合、「受益者変更登記」を行う
- 登録免許税:不動産1個につき1,000円
受託者変更があったときの登記手続き
- 登記の内容:受託者が死亡・辞任・解任された場合など、新たに選任された受託者へ所有権移転登記を行う
- 登録免許税:所有権移転分について非課税(受託者間の移転であるため)
信託終了時の登記手続き
- 登記の内容:受託者→帰属権利者への所有権移転登記、および信託抹消登記
- 登録免許税:
- 所有権移転分は固定資産税評価額の2%(相続人が受益者の場合は0.4%)
- 信託抹消分は不動産1個につき1,000円
家族信託の不動産登記に必要な書類と流れ
信託財産に不動産が含まれていた場合、不動産登記が必要になります。手続きの必要書類と流れについて整理していきましょう。
家族信託の不動産登記|必要書類の代表例
不動産登記に必要な書類を確認しておきましょう。
固定資産評価証明書
- 不動産所在地の市町村役場で取得し、土地・建物の評価額を確認
- 不動産権利証(登記済権利証)または登記識別情報
- 既に登記済みの不動産であれば、権利証や識別情報が必要
登記原因証明情報
- 家族信託契約書が該当
信託目録
- 受益者、管理方法、終了事由などを記載
委託者・受託者の印鑑証明書や住民票
- 委託者は実印を、受託者は認印でよい場合が多い
身分証明書
- 運転免許証など
家族信託の不動産登記|登記申請の流れ
登記申請の流れを大まかに追ってみましょう。
司法書士が書類を準備
- 必要書類を一式そろえ、申請書を作成
法務局へ提出
- 不動産所在地を管轄する法務局に書類を提出し、所有権移転登記と信託登記を申請
審査・完了
- 法務局の審査を経て登記が完了すれば、新たな登記識別情報が発行される
大半のケースでは専門的な知識が求められるため、司法書士に手続きを依頼するのが一般的です。
家族信託で不動産を信託する際の注意点
家族信託契約で不動産を信託するときは、次の点に十分注意して手続きを行いましょう。
登記手続きが不可欠
- 信託法の分別管理義務により、所有権移転登記と信託登記は欠かせない
登録免許税と費用の発生
- 設定時や終了時など、それぞれの局面で必要となる登録免許税に注意
信託契約書の整合性
- 登記原因証明情報として信託契約書を提出するので、内容の不備や齟齬がないように入念に確認
将来の変更・終了時の手続き
- 受託者が交代する場合や信託終了時にも登記が必要となるため、継続的な管理体制を考えておく
まとめ
家族信託は、生前対策や相続対策に大きなメリットがある一方、不動産登記の手続きが複雑であるところに注意が必要です。専門家のサポートを受けて、ミスやトラブルを回避し、家族信託のメリットを活かせるよう検討してみるのもいいでしょう。
当行政書士法人では、家族信託の設計・契約書作成をはじめ、不動産信託に関する各種手続きや司法書士との連携による総合的なサポートを行っています。信託登記や相続対策でお悩みの方は、ぜひ無料相談をご利用のうえ、お気軽にお問い合わせください。専門知識と豊富な経験を活かして、最適な生前対策をご提案いたします。










