家族信託は、高齢者や資産を所有する人が「財産の管理と運用を信頼できる受託者に任せつつ、そこから生じる利益を自分や家族(受益者)が受け取る」という仕組みをもちます。
しかし、委託者が死亡したときに家族信託がどのように扱われるかをご存じでしょうか。契約が自動的に終了する場合もあれば、残余財産がどこに帰属するか分からず混乱するケースもあるのです。
ここでは、委託者の死亡後に家族信託契約や残余財産、各種手続きはどうなるのかについて説明していきます。
委託者の死亡による信託契約の効力
委託者の死後に家族信託契約がどのように扱われるかは、信託契約にどのような条項が盛り込まれているかによって変わります。
信託契約終了の定めがある場合
家族信託契約には、「委託者の死亡をもって信託契約を終了する」という旨の条項が入っていることが多くあります。委託者が死亡した瞬間に契約が終了するので、遺産相続のように「その後どうなるか」を明確にしておくことが非常に重要です。
- 契約書の該当条項を確認:「死亡時に終了する」と定められているかどうか
- 残余財産の帰属先:信託終了時点で残った信託財産が誰のものになるかをしっかり記載
信託契約に死亡条項がない場合
もし契約に「委託者死亡時」の扱いが明記されていないと、委託者の死亡後も契約は継続するのか、終了するのか曖昧になりがちです。このような場合には、以下の視点で判断する必要があります。
- 当該信託契約が遺言信託か遺言信託以外か
- 委託者死亡後の地位・権利がどう扱われるか
- 相続人が複数いるときはどう調整されるか
いずれにせよ、不安定な状態を避けるため、生前から死亡後の信託契約の行方を契約書に明記しておくことがポイントです。
信託法で定める「残余財産」の扱いとは
家族信託が終了するとき(例えば委託者死亡時)、その時点で残っていた財産(残余財産)を「誰が受け取るか」は信託法第182条で定義されています。
- 第182条1項: 残余財産受益者または残余財産の帰属権利者に帰属する
- 第182条2項:1項による指定がない・指定された人が権利を放棄した場合は、委託者または委託者の相続人が帰属権利者になる
- 第182条3項:1項・2項のいずれでも決まらないときは、清算受託者が帰属権利者となる
残余財産受益者と帰属権利者の違い
では、信託法に記載されている「残余財産受益者」と「帰属権利者」とはどのような立場を指しているのでしょうか。
- 【残余財産受益者】契約に定められた段階で、将来の残余財産を受け取る権利を有する立場
- 【帰属権利者】信託終了時(清算開始時)に初めて残余財産を受け取る権利を持つ立場
多くの家族信託では、残余財産受益者か帰属権利者を明確に指定しておくことで、委託者死亡後の財産がどこへ行くかを決定できます。
信託終了後の手続き:清算受託者の役割
家族信託が終了すると(たとえば委託者が死亡したとき)、それまでの受託者は清算受託者となり残余財産の清算手続きを進めます。具体的には以下の流れを踏みます。
- 現務の結了:既に発生している手続きや支払いをすべて完了させる。
- 信託財産に属する債権の取立ておよび債務の弁済:運用していた資産の回収や、未払いの費用(税金など)の支払いを行う。
- 受益債権に係る債務の弁済:受益者がまだ受け取っていない給付分があれば、それを支払う。
- 残余財産の給付:最終的に残った財産を、第182条の優先順位に沿って指定された権利者へ譲渡・移転する。
「遺言信託」と「遺言信託以外」の区別
家族信託には大きく分けて、遺言信託とそれ以外の信託があります。
遺言信託
遺言信託とは、「遺言書によって委託者(遺言者)が受託者を指定する形式」のことをいいます。委託者の死亡によって効力が発生し、受託者は財産を管理・処分しながら相続人へ財産承継を実施する点が特徴的です。生前対策というよりは、死後の財産承継を円滑に行う手段であるといえるでしょう。
遺言信託以外の家族信託
通常の家族信託は契約成立時点から有効(生前対策として機能)となりますが、「委託者死亡による契約終了の旨」が定められていない場合、委託者の地位と権利は相続人が継承することもあります。
したがって、相続人が複数存在する場合は地位の承継が複雑化するリスクが高いといえるでしょう。
委託者死亡後に安心できる家族信託を組むポイント
委託者が亡くなっても、残余財産の扱いの複雑化や相続人による紛争を回避するためには、次のことに注意して家族信託契約を締結することが大切です。
1.契約書に「委託者死亡時の扱い」を明記する
信託契約書には、いつ家族信託が終了するのか・残余財産が誰に帰属するのか・清算受託者は誰になるのかを明記しておきましょう。
2.残余財産受益者・帰属権利者の指定
信託法第182条に基づき、誰が残余財産を受け取るのかを契約書に書いておくことも大切です。受益者が死亡した場合の二次・三次受益者まで定めておくのも1つの方法です。
3.遺言書や他の相続対策との整合性
遺留分に配慮しつつ、遺言書や生前贈与などとのバランスを検討したうえで信託契約書を作成することが重要です。信託契約と遺言書などとの間に矛盾が生じないよう、専門家に確認しておく必要も出てくるでしょう。
4.清算受託者の役割を明確化
信託終了後の手続き(債権回収・残余財産給付)を誰が行うかを決めておくことも大事です。必要に応じて信託監督人の設定も検討しましょう。
当社の家族信託フルサポート
当行政書士法人では、家族信託に関する以下の業務をまとめてお引き受けしています。
- 信託契約案作成および公正証書手続き支援
- 委託者・受託者へのヒアリングを踏まえ、最適な契約書案をご提案
- 財産調査(5件まで)と目録作成
- 不動産・預貯金・有価証券などの把握と整理
- 受託者への継続的サポート(3年間)
- 契約後の運用や各種名義変更、金融機関手続きなど
- 不動産に係る登記
- 提携司法書士と連携して迅速に信託登記を完了
- 税務関係の調整
- 税理士と協力し、相続税や贈与税を含めた最適プランを構築
このほか、信託財産に金銭が含まれている場合の金融機関調整、信託口口座または信託専用口座の開設サポートと資金移動支援なども含まれています。
契約書作成のみのサポートも承っております。家族信託に盛り込むべき条項は家族構成や財産状況によって異なるため、しっかりと打ち合わせを行ったうえで「委託者死亡後の取り扱いをどう設定するか」を決めることが成功のカギです。
まとめ
弊社では、家族信託に関する無料相談を実施しているだけではなく、ご依頼にあたっては、委託者死亡後の残余財産や契約終了の手続きまで視野に入れた包括的サポートを行っています。
生前対策と相続対策をバランス良く進めたい方、あるいは既に家族信託を検討中だが契約書の作成に不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。適切な条項の設計を通じて、委託者死亡後のトラブルを未然に防ぎ、安心できる財産管理・承継プランを一緒に構築していきましょう。










