子供が障害を抱えている場合、親としては自分が亡くなった後の生活をどのように支えていけばいいかが大きな心配事となることから、よく「親亡き後問題」と表現されています。特に経済的な面において、親が残す財産を子供自身が管理・運用できるとは限らないため、財産を遺すだけでは十分に子供を守りきれない点に不安が残るのです。

 

そこで注目されるのが家族信託です。家族信託を活用すれば、親が生前に「自分亡き後の財産の使い方」や「子供の生活費の確保」を具体的に決めておくことが可能です。ここでは、障害を持つ子供のために家族信託を利用した事例について説明していきます

 

親亡き後問題に直面した事例

ある夫婦(ともに50代)には、成人した二人の息子がいました。長男は既に結婚しており、自立した生活を送っています。しかし、次男は精神的な重度障害を負っているため、働くことや自分で生活費を管理することが極めて難しい状況です。

 

夫婦は長年、障害を持つ次男の世話をしながら暮らしてきましたが、自分たちが年を重ねるにつれ「もし自分たちが認知症になったり夫婦そろって亡くなったりしたら、次男はどうなるのか?」という不安が膨らんでいきました。

 

単なる財産相続だけでは不十分

夫婦は、「自分たちが亡くなったら、ある程度の財産を次男に相続させればいいのでは?」と最初は考えていました。しかし、次男が受け取った財産を適切に管理できる保証がないことに気づき、単なる相続だけでは問題が解決しないと理解したのです。

 

また、長男には既に家庭や仕事があるため、次男の生活費や日常ケアに大きな負担をかけるのは申し訳ない気持ちがありました。

 

家族信託という選択肢

そこで夫婦が注目したのが家族信託でした。家族信託ならば、夫婦が生前に「財産の管理・運用方法」や「子供への生活費の渡し方」を細かく決めることができ、なおかつ夫婦自身が健在のうちからスキームを開始できる点が魅力だったのです。

 

家族信託の具体的な仕組み(スキーム)

この夫婦は以下のように家族信託を設計しました。

  1. 委託者:夫婦(50代の父母)
  2. 受託者:自立している長男
  3. 受益者
    • 夫婦(健在時)
    • 二人の子供(夫婦死亡後)

※ただし、障害を持つ次男には「定期的に生活費を給付する」条件を契約で明確化

 

信託契約による各人の役割

信託契約を結ぶと、委託者(夫婦)は受託者(長男)に財産を「信託財産」として預け、管理権限を一部委任することになります。夫婦がまだ元気な間は、自らが「受益者」として財産の恩恵を受けつつ、長男が管理を補助するイメージです。

 

親亡き後の生活費確保

もし夫婦が亡くなったときは、受益権が自動的に二人の子供へ移行するよう設計します。特に障害を持つ次男については、「長男(受託者)が月々〇〇円を定期給付する」など、生活費の分配方法を具体的に契約書へ盛り込みました。こうすれば、次男が突然大金を持って混乱するリスクも防ぎ、必要なタイミングで必要な額を確保できます。

 

平等な財産分配と負担軽減の両立

親としては、子供たちが平等に財産を分け合うことを望んでいました。しかし、障害を持つ次男には日々のケアや生活費サポートが必要です。一方で長男に過度な負担をかけたくない気持ちもあったため、相続割合を調整しながら、長男に受託者としての役割を果たす対価を受け取れる仕組みを作ったのです。これにより、全体としてフェアな状態を保ちつつ、次男の将来の安定を確保しました。

 

遺言書や成年後見制度との違い

家族信託は、遺言書や成年後見制度とはどのような点で異なり、障害のある子どもとその親をどのように支えることができるのでしょうか。

 

遺言書だけではカバーできない期間がある

遺言書はあくまでも「親が亡くなった後」に有効となる文書です。たとえば、親が認知症になり介護施設に入っても亡くなるまでの間は遺言書が発動しないため、その期間の財産管理をどうするかという問題が残ります。

 

家族信託であれば、生前・死後の両方にわたってスムーズな管理体制を築くことができるため、非常に有効な策となるでしょう

 

成年後見制度のリスク

成年後見制度を利用すれば、障害を持つ子供の財産管理をサポートできますが、次のような制約が生じることも知っておかなくてはなりません。

  • 後見人自身が高齢化・病気になる可能性がある
  • 家庭裁判所の監督や手続きが煩雑である
  • 大きな財産の運用・処分には都度許可が必要になる場合が多い

家族信託であれば、親自身の意思を詳しく契約書に反映し、柔軟で長期的な財産管理が可能です。

 

家族信託を検討する際の注意点

家族信託の活用を検討する場合は、次のことに注意して設計を整えていきましょう。

 

信託契約書の内容を明確に

家族信託の効果は、契約書に何をどう記載するかで大きく変わります。誰がいつから財産を管理するのか、収益をどのように分配するのか、最終的に財産を誰が引き継ぐのかなどを明確に定めておく必要があります。

 

税務面・法律面の専門家との連携

不動産や預貯金を信託財産に含める場合、登記の移転手続き税金(贈与税・相続税など)の扱いが絡んできます。家族信託を円滑に進めるためには、司法書士・行政書士・税理士といった専門家の力を借りることを検討してみましょう

 

他の親族との調整

家族信託によって特定の子ども(障害を持つ子)が手厚くサポートされることになる場合、他の兄弟姉妹が「自分の取り分が減るのでは?」と不安に思う可能性もあります。事前に家族全員で意向を共有し、合意形成を図ることが円満な相続・財産管理に繋がるでしょう

 

まとめ

障害を持つ子供の将来を思う親にとっては、「自分が亡くなったあと、この子の生活は大丈夫だろうか」という不安が常に付きまといます。遺言書や成年後見制度も選択肢の1つではありますが、やはり家族信託という「生前のうちから契約で決めておける」「複数の子供への財産分配を柔軟に設定できる」手段は非常に魅力的です。

 

もしあなたのご家庭でも、障害を持つ子供の「親亡き後問題」にお悩みなら、ぜひ家族信託という手法を検討してみてください。

 

弊社では初回無料相談をご用意しておりますので、お気軽にお問い合わせください。個々のご事情やご希望に合わせたスキームをご提案しますので、具体的な将来設計を一緒に考えてみましょう。

 

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