人が亡くなった後の諸手続きは相続関連だけではありません。葬儀・火葬・埋葬・入院費の精算・賃貸住宅の解約・遺品整理など、多岐にわたる死後事務を行う必要があります。これら死後事務を円滑に行うために活用されるのが死後事務委任契約であり、適切な契約書を作成することで、家族や第三者が「何を、どのように」進めるかを明確化できるのです。

 

ここでは、死後事務委任契約書のひな型に加え、作成手順や記載例についても説明していきます

 

死後事務委任契約とは

死後事務委任契約は、委任者(契約を結ぶ本人)が死亡した後に発生する種々の手続き(相続手続き以外)を、あらかじめ指定した受任者へ行ってもらう生前契約です。

 

死後事務の範囲

以下のような死後事務が代表的です。

  • 葬儀・火葬・埋葬の手配
  • 病院や施設の費用精算
  • 住居やアパートの解約・片づけ
  • 遺品整理や不要品の処分
  • 年金・保険の死亡届(相続に該当しない部分のみ)
  • ペットの引き取り先への手続き など

 

遺言書との違い

遺言書「相続財産を誰にどのように渡すか」を決めるのが目的で、死後事務(葬儀や遺品処理など)については法的拘束力がありません。一方、死後事務委任契約は、相続以外の死後手続きを「契約」として交わすため、きちんと書面化しておくことで受任者が契約事項の履行を行う点で異なっています。

 

死後事務委任契約書の記載事項

死後事務委任契約書を作成するうえで、非常に重要と思われる事柄について説明します。以下項目を契約書に盛り込むことで、受任者のスムーズな業務遂行が期待されます。

 

「契約終了しない」旨を明記

民法653条では、委任者または受任者が死亡すると通常の委任契約は終了すると定めています。しかし、死後事務委任契約では、委任者の死亡後に業務が開始されるため、契約書に何も記載しないままでは効力を発揮しません。

 

そこで、死後事務委任契約書には、「委任者の死亡によって契約が終了することはない」との特約を設けるようにしましょう。

 

家族・親族からの事前同意を明記

受任者が専門家などの第三者である場合、委任者の家族や親族が契約の存在を知らないと混乱やトラブルを引き起こしかねません

 

死後事務委任契約書について家族や親族から同意を得ておき、契約内容について周知しておくと、受任者の行動がスムーズに運ぶことが期待できます。

 

具体的な死後事務項目を明記

「火葬手続き」「葬儀の手配」「アパート解約」「ペット処分」など、実際に依頼したい事務をなるべく具体的に契約書に記載するほど、実務をスムーズに進めやすくなります。

  • 連絡してほしい人(名前・住所・電話番号など)
  • 葬儀社や霊園の指定
  • 遺品整理を行う業者の希望 など

これらを詳細に列挙しておけば、受任者が迷わずに対応できるでしょう。

 

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死後事務委任契約書の作成手順

死後事務委任契約書を作成するときは、大きく3つのステップを踏んで作成完了を目指します。

 

1.契約内容を検討

まずは、葬儀の規模や費用、遺品整理の方法、ペットの飼育方針など、どの範囲まで死後事務を委任したいのか具体的に整理しましょう

 

なお、相続に関わる財産分配事項は死後事務委任契約では扱えないため、財産については別途遺言書を作成する必要があります

 

2.受任者との合意形成

依頼者(委任者)と受任者がしっかり話し合い、書面化する内容(費用・報酬・連絡先など)について合意します。受任者に家族や親族がいる場合は、「契約後に家族の理解が得られない」リスクを減らすため、事前に同席してもらうのも一案です。

 

3.契約書の作成・公正証書化

契約書に必要事項を記載したら、最後に委任者と受任者が署名押印して2通作成し、双方が1通ずつ保管します。より強固な証拠力を持たせたい場合は公正証書にするのがおすすめです。

 

また、必要に応じて、生前対策に詳しい専門家(行政書士・弁護士など)に依頼し、契約書文案や預託金の扱いなどについてアドバイスしてもらうと安心です。

 

【例】死後事務委任契約のひな型

ここでは、死後事務委任契約書の主要項目を抜粋した一例を示します。実際の書式や文面は個々の事情により異なるため、あくまでも参考としていただければ幸いです。

委任者・佐藤一郎(以下、「甲」と称する。)と、受任者・鈴木二郎(以下、「乙」と称する。)は、甲の死亡後に発生する事務の遂行について、次のとおり委任契約を締結する。

第1条 死後事務委任契約の内容

甲は、本日、乙に対し、下記に掲げる死後の諸事務を委任し、乙はこれを受任する。

  1. 病院Aの入院費用、その他債務の支払い
  2. 入院保証金、入居一時金を含む残余債権の受領
  3. 遺体の引取り、葬儀の実施、納骨、永代供養
  4. 甲が賃借していた住居の明渡し、および不要な家財・生活用品の処分
  5. 甲の逝去に伴う関係者への通知
    • (例)田中三郎:住所 札幌市中央区南1-2/電話 011-123-4567
  6. 甲の死亡に関する行政機関への届出
  7. 家庭裁判所への相続財産管理人選任申立

第2条 預託金

  1. 甲は、乙との本契約締結時に、死後事務に必要な費用および乙の報酬に充てるために、金三〇〇万円を乙へ預託する。
  2. 乙は、前項の預託金について「預かり証」を作成し、乙自身の財産と区別して適切に管理しなければならない。

第3条 報酬

  1. 甲は、乙に対し、死後事務の対価として金五〇万円を報酬として支払う。
  2. 乙は、死後事務の完了後、甲から預託された金銭のなかから上記報酬を受領できるものとする。

本契約が成立した証拠として、本書を二通作成し、甲乙各自が署名・捺印のうえ、各一通ずつ保管する。

令和〇〇年〇〇月〇〇日

札幌市中央区南〇条一番地
委任者(甲) 佐 藤 一 郎 ㊞

札幌市南区南〇条〇丁目一番地
受任者(乙) 鈴 木 二 郎 ㊞

 

実際の書式は個々の契約状況などにより変わってきます。詳しくは当行政書士法人までお問い合わせください。

 

トラブル回避のポイント

委任者本人の死後に発効する死後事務委任契約は、本人不在のまま契約事項が履行される性質があります。このため、委任者がまだ元気なうちに対策しておくことが、受任者と家族・親族の間のトラブル防止のカギになってくるでしょう。

 

受任者を信頼できる人物・専門家に

  • 私用流用の危険を回避し、公平かつ誠実に手続きを進められる人を選ぶ
  • 専門家(行政書士・弁護士)に依頼する場合、報酬や運用実績を確認

 

家族への情報共有

  • 後々「こんな契約があるとは知らなかった」と親族が反発するケースを防ぐ
  • 葬儀の方法が家族の意向と違う場合は、事前に調整

 

預託金の管理を明確化

  • 専用口座を設ける、会計報告ルールを定めるなど使途を限定し不正を防ぐ

 

生前整理で費用を軽減

  • 葬儀プランの事前比較や物品の断捨離で、必要な預託金を抑える

 

まとめ

死後事務委任契約は、亡くなった後に必要となる事務手続きを生前のうちに信頼できる受任者へ任せる重要な手段です。相続手続きは「遺言書」で指示できますが、葬儀や住居の片付けなど相続財産以外の事務については遺言書では拘束できないため、委任契約を整備することが欠かせません。

 

死後事務委任契約の締結に向けて不安があれば、弊社の無料相談をぜひご利用ください。契約書の文案作成や公正証書化、預託金の算定などの懸念事項を1つずつ解決して希望する死後事務委任契約書の完成を目指しましょう。

 

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