家族信託は生前対策の一環であり、自分の大切な財産を信頼できる家族(受託者)に託して将来的な管理や運用、身上監護を任せる制度です。しかし、任せる相手も人間であり、「魔が差す」可能性をゼロにはできないのが実情かも知れません。

 

ここでは、家族信託で受託者に使い込みされたときの対処法について説明していきます

 

受託者の義務と責任

家族信託は、委託者が受託者に財産管理を任せ、そこから生じる利益を受益者が受け取るしくみです。たとえば高齢の親を委託者・受益者とし、子が受託者となるケースが典型で、親が認知症や病気などで判断能力を失った場合でも、子が代わりに財産管理や各種手続きを遂行します。

 

受託者が負う主な義務・責任

受託者は、信託された財産を保護・運用する「管理者」として、複数の義務や責任を負います。主なものは以下のとおりです。

 

1.分別管理義務

    • 受託者は信託された財産と自分の個人財産を厳格に分けて管理しなければならない
    • 預金口座を分けるなどの対策を行うことで、不正利用や差押えのリスクを減らす

 

2.善管注意義務

    • 受託者は善良な管理者として、細心の注意を払いながら財産を管理する
    • 委託者や受益者の利益を守るため、杜撰な運用や放置があってはならない

 

3.忠実義務

    • 受益者のために忠実に行動し、利益相反行為や競合行為は制限される
    • 受益者の利益を最優先に考え、信託財産を適切に活用する

 

4.公平義務

    • 受益者が複数いる場合、それぞれに対して公平に財産を管理・分配する必要がある

 

5.損失補てん責任

    • 受託者の行為によって信託財産に損失を与えた場合、受託者はその損失を補償しなければならない
    • 分別管理義務を怠り、個人の借金返済に使うなどの行為は厳禁

 

5.帳簿の作成・保存および報告義務

    • 受託者は定期的に財産状況や収支を整理し、必要に応じて委託者や受益者に報告する

 

家族信託の使い込みを防ぐ対策

信託財産はある程度大きな額になりやすいことから、委託者としては万が一に備えて対策を講じておく必要があります。代表的な対策として以下を挙げることができます。

 

受託者を複数人にする

受託者が1人しかいない場合、監視が行き届かず「一人で財産を運用するため第三者によるチェック機能がない」状態になりやすいといえます。そこで、複数の受託者を選任し、受託者が互いに監視・協力し合うことができれば、不正利用や浪費を防ぎやすくなるでしょう。

 

ただし、複数受託者の意見対立や調整の手間も増えるため、適切な人選と契約内容の明確化が重要です。

 

信託監督人の設置

信託法に基づき、信託監督人を設定する方法があります。信託監督人は、受託者が財産を正しく管理しているかを監視する立場です。特に、次のような場合に信託監督人が有効です。

 

  • 受益者が認知症や障害などで財産状況を自力で把握しにくい
  • 受託者が正しい管理をしているか心配
  • 公平性を確保したい

 

信託監督人には行政書士や弁護士、司法書士など、法律や会計の専門家が就任するケースが多く、一定の権限(不正行為の是正要求など)を持ちます。

 

契約書に厳格な条項を盛り込む

家族信託契約書作成時に、使い込みを防止するための条項を設けることも重要です。代表的な条項として次の事柄を挙げることができます。

 

定期報告義務の徹底

  • 1回または四半期ごとに財産目録・収支報告を提出させる

 

預金口座の限定

  • 指定の信託口座のみで資金を管理し、他口座への振替を制限

 

大口の支出時には受益者の同意が必要

  • 高額な資金移動や不動産の売却などは、あらかじめ受益者や監督人に了承を得る

 

使い込みが発覚したときの対処法

万が一、信託財産の使い込みが発覚した場合、どのように対処すればいいのでしょうか。具体的な対処法を3つに絞ってみましょう。

 

財産返還要求

家族信託契約に基づき預かった財産を受託者が私的に流用した場合は、信託財産の使い込みとして不法行為となります。受益者は以下の対処が可能です。

 

不正利用した金銭などの返還要求

  • 受託者に対して「使い込んだ分をすぐに返してほしい」と請求

 

合意が得られない場合は法的手段

  • 訴訟を提起し、判決や和解を通じて強制的に返還させる

 

受託者の解任

受託者が使い込みなど不正を働いた場合、受益者や委託者は家庭裁判所に対して受託者解任を申し立てることができます解任理由が正当と認められれば、裁判所が受託者を解任し、新たな受託者を選任する流れになります

 

信託監督人の権限行使

信託監督人が設置されている場合、使い込みが発覚した段階で監督人が是正指示や報告を求めることが可能です監督人は受託者の行為に異議を唱えたり、必要に応じて裁判所へ解任手続きの申し立てを行ったりすることもあります

 

起こりうるトラブル例と防止策

実際に起こりやすいトラブル例と対策法について整理します。

 

【受託者が個人口座に信託財産を移してしまうケース】

    • 例)分別管理義務に違反し、受託者が私的な支出に流用する
    • 対策契約書で信託専用口座を指定し、定期的に監督人へ通帳コピーを提出させる

 

【大口の不動産売却で得た資金を別の投資に回すケース】

    • 例)事前に受益者や監督人の合意なしに高リスク投資を行い損失を出す
    • 対策大きな支出や投資行為は「受益者または監督人の承諾が必要」という条項を設定しておく

 

【受益者による不正に長期間気付かないケース】

    • 例)高齢の受益者が認知症を抱えていることを利用し長期にわたり受託者が不正を行う
    • 対策信託監督人を必ず設置し、四半期または月次で帳簿の確認を行う

 

まとめ

家族信託は、高齢者の財産保護や相続対策に有効な制度ですが、受託者による使い込み防止には工夫が必要です。初期段階から専門家(行政書士・司法書士・弁護士など)のサポートを受け、契約書の作成や信託監督人の設定など万全の対策を講じましょう。

 

当行政書士法人では、家族信託契約にまつわるご相談や書類作成、信託監督人設置のサポートを行っています。 使い込みリスクが気になる方は、弊社の無料相談をお気軽にご利用ください。経験豊富な専門家が、最適な予防策をご提案いたします。

 

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