犬や猫、鳥など、大切なペットを家族の一員として扱う家庭は多いでしょう。しかし法律上ペットは「物」として扱われ、人間のように直接財産を「相続」させることはできません。そこで注目されるのが、「負担付遺贈」や「負担付死因贈与」「信託」などの方法です。
ここでは、ペットに財産を遺すための3つの方法について説明していきます。
ペットに財産を残すことはできるのか?
日本の法律上、犬や猫などのペットは「動産」扱いです。人間ではないため、直接「相続人」として財産を取得することはできません。つまり、「飼っている犬に100万円を残す」などと書いても、法的には無効となります。
他者に財産を遺しペットの世話を託す方法
そこで考えられるのが、ペットを世話してもらう負担を引き受けてもらう代わりに財産を譲るという仕組みです。具体的には「負担付遺贈」や「負担付死因贈与」「信託」という手段によって実現することができます。
「負担付遺贈」遺言書でペットの世話を依頼し財産を渡す
「負担付遺贈(民法1001条など)」とは、遺言書の中で「○○さんに財産をあげます。ただし、その代わりに△△という義務を果たしてください」という形で財産を譲る方法です。果たして欲しい義務をお願いすることを「負担付」と言うのです。
ペットの世話をお願いしたい場合は、義務の内容として「うちの犬を死ぬまで面倒見てほしい」「猫の健康チェックを定期的に行ってほしい」などと記載するといいでしょう。受遺者はその義務(負担)を受け入れることを前提として遺産を取得することができます。
負担の具体例(食事・散歩・健康管理など)
ペットの世話に求められる負担を明確化するため、次のような条件を遺言書に書き込むことが考えられます。
- 1日2回食事を与える(フードの種類・量を指定)
- 1日1回は30分以上の散歩(犬の場合)
- 年に1度の健康診断(獣医でのチェック)
- ペットの飼育費用を遺贈金から支出(飼育費+報酬)
負担付遺贈を成功させるコツ
負担付遺贈が成功するかどうかは、受遺者が誠実に義務を果たしてくれるかどうかにかかっています。このため、以下の点について十分な準備を行うようにしましょう。
- 相手にきちんと事前承諾を得る(いきなり遺言書で指名されても困る)
- ペットの飼育費や獣医代など、十分な金額を遺贈する
- 報酬も含めることで、「飼育放棄する動機」を減らす
【負担付死因贈与】贈与契約でペットの飼育を確保する
「負担付死因贈与」とは、「私が亡くなったら財産をあげる。その代わりにうちのペットを世話して欲しい」といった契約条項を盛り込んだ贈与契約のことをいいます。ペットの世話を「負担」部分とし、これを果たしてくれる代わりに財産を贈与する、という内容です。
遺言書は遺言者の一方的意思表示になりますが、贈与契約であれば双方が合意していることが前提になっているため、約束を守ってもらえる確率が高いといわれています。
【信託】ペットのための財産管理を確実にする
「信託」は、委託者が財産を受託者に預け、特定の目的のために管理・運用してもらう仕組みです。ペットの世話を目的とした信託契約の場合、次の点を契約内容に盛り込み同意を得ることが重要になってきます。
- 「ペットの世話に必要な費用を捻出するための口座」を信託財産とし、受託者に使用してもらう
- やり取りを契約化してペットの飼育費と管理報酬を確保する
- 不安があれば「信託監督人」を置き飼育状況をチェックしてもらう
ペットに関する遺言・契約を作成する流れ
もっとも大事なのは、飼育者となる人が本当にペットを面倒見る気があるか確認することです。後になって「そんなつもりはなかった」と拒否されると非常に困ったことになります。あらかじめ十分説明を尽くし、負担部分に見合う報酬(財産)額で合意しておくことが重要です。
負担付遺贈か、死因贈与か、信託かを選ぶ
- 負担付遺贈:遺言書に記載しておく
- 負担付死因贈与:生前に贈与契約を締結しておく
- 信託:契約でペットの世話の仕方と管理報酬を決める
遺言だけで対応できるなら負担付遺贈が手軽ですが、より契約的な確実性を求めるなら死因贈与や信託のほうが適している場合もあります。
遺言書や契約書に署名押印する
負担の内容や報酬、飼育費の出し方など細かい条件を文書化します。遺言書の場合は自筆証書遺言か公正証書遺言かを選びますが、ペット関連の指定が複雑なら、公正証書遺言が安全でしょう。いずれの場合でも、当該文書には、遺言者もしくは委託者と受遺者もしくは受託者による署名押印が必要です。
トラブルを防ぐための注意点
配偶者や子が相続人だがペットの世話は友人に頼むというケースでは、相続人と世話人が異なるため資金の管理や監視が必要かもしれません。遺言執行者や信託監督人を指定しておくのも有効です。
報酬を明確にし、飼育放棄を防ぐ
ペットの飼育は手間と費用がかかります。「ペットの面倒を見る代わりにこれだけの財産をあげる」という報酬をきちんと明記しないと、途中で放棄されるリスクがあります。
信託監督人や遺言執行者の指定
信託の場合は「信託監督人」を、負担付遺贈の場合は「遺言執行者」を置くことで、本当にペットが適切に世話されているかチェックする仕組みを整えられます。
まとめ
負担付遺贈や負担付贈与、信託契約といった手法を使えば、飼い主が亡くなってもペットが行き場を失わず、きちんと世話を受けられるよう手配することができます。「自分がいなくなった後も大切な愛犬・愛猫を守りたい」と考えるなら、遺言や契約の形で飼育を依頼し、適切な報酬も用意しておくのがおすすめです。
当社では、遺言書作成や死因贈与契約・信託など、生前対策や相続に関する幅広いサポートを行っています。ペットへの思いを実現するために最適な方法を一緒に考えましょう。無料相談も随時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。